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一握りの後悔と、(そして、期待)

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「なあ、ユースタス屋」

滑稽だろう。
誰よりも海に焦がれた俺が、誰よりも海に嫌われているなんて。
笑えばいいさ。
俺はそういって、表情を崩さないユースタス屋を見つめる。

「俺は、後悔してない」

ユースタス屋が度数の高いアルコールを飲みながら、呟いた。
まるで独り言のようだ。

「俺は、この能力を手に入れたことを、」
「あいつらと海に出たことを、」

「何一つとして、後悔しちゃいない」

俺は一瞬言葉を失った。ユースタス屋はまっすぐに俺を見つめている。
射抜くような視線に、すぐに俺は後ろめたくなって視線を逸らした。

「ユースタス屋は俺とは違うんだな」
「俺はこの能力を得て、凡てを失った」

「外科医としての立場も、一人の人間としての立場も」
「全部、」


「…ばっかじゃねえの」

トラファルガー。お前、バカだよ。
ユースタス屋はそういって、グラスをテーブルに叩き付けた。


「お前を必要としてくれてるやつが、いるだろ。
お前のクルーたちは、お前を待ってる。
医者としてのお前を、そして、船長としてのお前を」

「…」

「凡てを失ったって、得たいものがあったんだろ。だから海に出たんだろ」

「ユースタス屋…」

「……っち、胸糞わりぃ……俺は弱いお前に興味なんてねえんだよ」

ユースタス屋が立ち上がる。その姿をぼう、と眺めていると、何時の間にかユースタス屋は出入り口付近に立っており、俺はどうしたものか、と首をかしげる。



「おいトラファルガー!……お前はバカじゃねえだろ」
「…どういう意味だ、ユースタス屋」


「気づけっつってんだよっ!お前を必要としてるやつがこの世界にどれだけいるかってことにな!」


力強く扉を閉めて出て行ったユースタス屋に、思わず口元がつりあがる。





「おもしれえ…………おい、ベポ」
「アイアイキャプテン!」
背後に控えていたクルーを呼びつけて、深く微笑む。







「あれが告白ってやつか?」
「きっとそうなんじゃない?」


(フフッ、照れ屋なアイツが告白か……)
(……待ってろユースタス屋)





「行くぞベポ、ログはもう溜まっただろ。
出航だ」
「アイアイキャプテーン!!」


(―――俺の存在意義をお前が見出してくれた)
(だから、)
(…いつか俺も、お前の存在意義になれるような男になって、)



(お前を迎えにいってやるよ)





***

そうしてローはストーカーになるんだよきっと。
キッドはうざいだろうなあ。すくなくとも書いてる私はうざい。