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夢に入る

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「イルカ先生〜…むにゃむにゃ…」
ぐっすり、まるで何の憂いも持ちえて無い様子で、眠っている上忍の横で、寝言で呼ばれた当の本人は眠りに入る事ができないでいた。
今夜もカカシはイルカの夢をみているらしい。
時に切なく、時に愛しげに呼ばれるイルカの名はカカシのイルカへの想いをそのまま現しており、またある時にはその寝言は隣で聞いているのが恥ずかしいぐらいの艶を含めている事すらある。
そしてまた今夜も。
「勘弁してくれ…」
1月前、カカシに想いの丈を込めた告白を受けたものの、イルカはまだカカシにその返事ができないでいた。

本当は、何度も断ろうと思ってカカシに伝えようとしたのだ。
自分は男で、貴方の事は尊敬もしているし、好ましくも思っている。
一緒にいても楽しいと思う。
だけども、それは恋愛からの気持ちでは無くて、おそらく自分はこの先も貴方に貴方の願う様な気持ちを向ける事はできそうにない、と。
だが、その度にカカシに上手く話をそらされてしまったり、元々、友人としての付き合いはとても楽しいもので、正直な所、できればこの関係を無くしてしまいたくないと思っていたイルカの気持ちもあって、事はずるずると先延ばしになってしまっていた。
そうこうしている内に、カカシが頻繁に家に来る様になった。
我ながら、一度告白を受けて、断りまでしようと思った相手を家に上げて、あまつさえ泊めてしまうのはどうかと思いもしたのだが、カカシの何の含みも無い好意を向けられると、むげに断りを入れてしまう方が不自然に思え、やはりずるずると親しい友人然としたやりとりまま家に泊めてしまう事が多くなっていった。

いつからだろうか、カカシが深夜、それこそ毎晩の様に自分の夢ばかりを見ているのだと気付いたのは。

目覚めた時のカカシにはそんな夢を見ていたという様子は伺えず、気付かないでいるのか、それともイルカに気を使ってそんなそぶりを見せない様にしているのかは分からなかった。
それでも昼間のカカシとは反対に、夜のカカシは無防備にイルカの名を口にする。
「俺が悪いのかよ」
ぽつりと口にしてそうなのかもとイルカは思った。始めから、自分の思ってる気持ちとカカシの気持ちとの違いを、きちんと伝えてしまわなかった事が今に至っている。
カカシは辛く無いのだろうか。
多分、イルカが口にしなくても、聡いカカシは本当はイルカの気持ちをすでに感じ取っているだろう。
それでも側に居たい、そんな切なる願いが聞こえた様で、イルカは涙が出てきた。
「イルカせんせい…」
カカシの夢の中で自分の姿はどれだけまっすぐに愛されているかを思うと、更に涙が出てきて止まらない。
「馬鹿ですよ…、アンタは……」

溢れた涙が一筋、眠っているカカシの肩に落る。
もそもそと寝返りを打つカカシは、イルカの方に向きを替え、閉じていた瞼をうっすらと開いた。
まだ、意識がはっきりとしていないまま、イルカを見つめている。
「イルカ…せんせい、泣いているの…?」
ぼんやりと力の入らない口調でたずねる声に、イルカは慌てて溢れた涙を拭った。
「せんせい…」
イルカを気遣いながら、カカシは両腕を伸ばし、その身体を身の内に包み込んだ。
「泣かないで…、先生…」
愛しげな表情、あたたかな声。きっとそれは夢の中のイルカに向けているそのままのもので。
そう感じてイルカは、抱きすくめられた両腕を無理に解く事はできなくなっていた。

緩やかになっていく呼気と共に、序々に深い眠りへと滑り落ちていく中、イルカはいっそこのままこの人の手に落ちてしまえればいいのに…と願った。
作品名:夢に入る 作家名:はな