二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

目の覚めるようなキスをして

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「カノン君、おまたせ。」
 今日に限って寝癖がひどかった髪の毛をまとめ上げて、洗面所から出てくると、カノン君はソファの上で気持ち良さそうに眠っていた。思わず眠ってしまうほど、カノン君を待たせていたのかと思うと、反省せずにはいられない。だからと言って、寝癖をそのままにして好きな人の隣を歩けるわけでもないけれど。
「起きて、カノン君。」
 声をかけてみるが、全く反応は無い。どうやら、うたた寝程度の眠りではないらしい。
 散々待たせておいて、不謹慎かもしれないが、こうやってカノン君が眠ってしまうということは、すごく嬉しい。いつも気を張っている彼も、私のそばでは安心してくれていることの表れになっているから。だから、もう少しだけ寝顔を見ていることにした。
 太陽の光があたって、色素の薄い髪がいつもにまして綺麗だ。日本人の血が半分も流れているとは思えないほど、整った顔立ち。ただ、見ているだけなのに、心拍数が上がっている気がする。流れるような髪の毛に触れようと、手を伸ばした。
「きゃっ!」
私は腕を強くひっぱられて体勢を崩し、簡単にカノン君の腕の中に納まってしまった。
「もう。カノン君、起きてたの?」
「いや、寝てたよ。さっき起きたばかり。」
カノン君はやさしく私の頭を撫でている。カノン君の手は大きくて温かいから、とても気持ちがいいのだけれど、子ども扱いされている気がしてしまうので、あまり素直に喜べない。
「そんなに撫でたら折角綺麗に結んだのに、また崩れちゃうでしょ。待たせちゃってごめんね。ほら、準備できたから早く出かけよう?」
 私は、カノン君の腕の中から起き上がった。しかし、カノン君は全く起き上がる気配を見せない。
「どうしたの?どこか具合でも悪い?」
 ひょっとしたら、眠っていたのも単にすることが無かったからではなく、調子が悪くて横になったのかもしれない。そう考えると心配になって、カノン君の顔を覗きこんだ。
「僕はいたって、元気だよ。」
 いつもと変わらない笑顔で、カノン君ははっきりと私の不安を否定した。けれど、相変わらずソファに横になったままである。私には、どうしてカノン君が起き上がろうとしないのか、全く理由が分からなかった。
「じゃあ、カノン君起きて。ほら、早く行こうよ。」
「うん、そうだね。でも僕、理緒がキスしてくれないと起きられないんだ。」
「へ?」
 私がカノン君にキスをする。
 カノン君の言葉を頭の中で繰り返すと、顔が赤くなっていくのが分かった。カノン君の突拍子も無い発言は、付き合っているうちに慣れてきて、最近では簡単に流せるようになってきていた。でも、今回の発言には驚かされてしまった。どこをどう考えたら、私がキスしないと起きられないという結論に達するのだろう。
「どうして起きるのに、私のキスが必要なの?」
「ここまでは自分の力で起きられたけど、もう僕の起きるための力は全部使っちゃったんだよね。だから、理緒の力を分けて欲しいなぁと思って。ほら。早く出かけたいんでしょう。キスしてよ。ね?」
 カノン君はとても楽しそうに、笑って言った。おそらく、本当にキスを望んでいるわけでは無いのだろう。こうやって私が動揺したり、困ったりするのを見て楽しんでいるのだ。カノン君ばかりが、そうやって私をからかって遊ぶなんてずるいと思う。たまには、私だってカノン君を動揺させてみたい。
「なんてね。そろそろ、ちゃんと起き…」
 カノン君の言葉を遮って、私はキスをした。とは言っても、口にする勇気は流石に出なかったから、額にだけれど。それでも、私からキスをしたことなんて無かったから、緊張した。心拍数が上がっているのが分かる。そして、キスをして、と言った張本人はすごく驚いた顔をして、耳まで赤くなっていた。予想以上の反応をしてくれたことが嬉しくて、いつも私をからかって遊ぶ、カノン君の気持ちが少し分かった。
「ちゃんとキスしたよ。だから、早く起きて出かけよう。ね?」