踊らされてみました
銀時はソファに座っていた。髪は長く、頬には大きな傷がある。
そこに、桂があらわれた。
女装をしている。チャイナドレスの深いスリットからのぞく脚は綺麗だ。
桂はなにも言わずに、銀時の横に腰をおろした。
落ちこんでいるようだ。
少しして、その口が開かれる。
「勢いで取ってしまった」
事情を説明した。
「マジでか!?」
銀時は眼をむいた。
桂はしょんぼりと肩を落としたまま、うなずく。
「もうお婿には行けぬ」
ぽつりと、ひとりごとのように言った。
銀時はぼうぜんとしている。
だが、しばらくして。
「まァ、気にすんな」
何気ない様子で、桂に言う。
「オメーのもらい手はとっくの昔に決まってんだからな」
桂の顔をじっと見る。
整った顔には化粧がほどこされている。
化粧しなくても、綺麗なのだが。
その顔は愁いに沈んでいる。
いつもより艶っぽく見える。
まァ、あってもなくてもどっちでもいーや。
そう思いながら、銀時は距離を詰めた。
手を桂の身体のほうにやる。
いつもしているのと同じことをしようとする。
「……ん?」
銀時の手になにかが触れた。
「なんだコリャー!? あるじゃねーかよ!」
服の上からではあるが、そこにあるのは、わかる。
直後、桂は銀時の手を払いのけた。
「冗談に決まっているだろう」
落ちこんでいる様子は、もう、どこにもない。
「ホラ、新八君を助けに行くぞ」
そう告げると、桂はさっさとソファから立ちあがった。
そして、銀時を見て、笑う。
からかうような、それでいて力強い、惚れ惚れするような笑みだ。
その服装と合っていない。
いや、むしろ、合っているのか。
おかしくなって、銀時も笑う。
「ああ、そーだな」
銀時はソファから立ちあがった。