ガガに呼ばれただけなんだから
待ち合わせの時間がメールには書いてある。「十時に」 本当にそれだけ。アメリカは思わず自分が送ったメールを読み返した。もっとずっと長い。どこで待ち合わせをして、何をしに行きたいか。行きたい場所とかあるかい? とか。アメリカはメールを打つのが速いけど、彼に送るまでには時間がかかってしまう。文法とか色々、ごちゃごちゃ言われてしまうからだっていい訳するけど多分それだけじゃない。だからだ。
アメリカはちょっと悔しかったから、お返しに「わかった」とだけ返事をした。あれだけ長いことかけてメールを打ったのに、たった一言だけかって思ったらくやしかったのだ。別につきあってるわけじゃなし、どうでもいいんだけど。イギリスなんかメールが素っ気ないからって言ってそこらの女子に振られまくればいいんだ。イギリスはアメリカをばかばかと言うけど、イギリスだって相当のものだ。アメリカはため息を吐いて携帯を投げ出した。ほんとはちゃんと返事がほしかったのに。あれとか、これとか。確かに打ち合わせのついでにどっか行こうよって些細な誘いかけだったけど、ほんとはそれにのってきてほしかった。
思わずため息をついたところで、携帯が鳴った。ぶるぶるふるえるのと一緒にガガがセクシーな声で歌うので、思わず携帯を持ち上げ、その一瞬後に投げ出したくなってしまった──FromU.K。
さあ、出るべきか、どうする? 耳元でそう訊ねられたような気がして、アメリカは息を詰め、勇気を出して携帯電話の「CALL」を押した。
作品名:ガガに呼ばれただけなんだから 作家名:tksgi