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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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青春アミーゴ 1

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案内された個室には笹川京子、三浦ハル、そして今日のガイドをしていたのだろう京子の兄であり、ツナヨシの<晴>の守護者である笹川了平と<雨>の守護者・山本武の姿があった。
「あっ!ツナさーん!!お久しぶりですぅ~」
ツナヨシを見るなり、元気な挨拶とともに飛びついてきたハルをあわてて受け止めた。
「わっ!ハル!何、いきなり。危ない!」
「えへへー。ツナさんは絶対受け止めてくれると信じてました」
「まったく」
相変わらずだ。やれやれとため息をつくも、久しぶりに会えた嬉しさは隠しきれない。
「ふふっ。ハルちゃんすっごく楽しみにしてたもんね」
くすくすと笑う声に目を向ければ、花が咲くように微笑む笹川京子の姿。こちらも相変わらず。
「京子ちゃん。久しぶり」
「ツナくん、ごめんね?忙しいのに押しかけて」
「ううん。こっちこそ、ごめん。なかなか時間とれなくて」
「こんな素敵なお店つれてきてくれて、ありがとう」
「ホント雰囲気のあるお店ですよね~ハル感激ですぅ」
旧交を温めあう三人の邪魔にならぬよう、そっと合図を交わし山本と了平が席をたつ。
「んじゃ、先輩。オレたちはそろそろ・・・」
「そうだな。京子、終わったら連絡しろよ。迎えにくるからな」
てっきり一緒に食事をすると思っていた二人の予想外の行動にツナヨシが声をかけた。
「え?二人も一緒に食べてけば?」
「なはは。遠慮しとくわ」
「うむ。女同士、積もる話もあるだろうからな。気を使わずゆっくりするといい」
「山本くん、お兄ちゃん、今日はありがとう」
「はひ、お世話になりました」
「いいってことよ。んじゃ、ツナはオレに連絡な」
「わかった。おつかれさま」
「おう」
「ではな」
軽く手を挙げ去って行く二人と入れ替わって給仕が食前酒を運ぶ。完璧なタイミングだ。
とりあえず三人は席に着き、乾杯。女同士の宴がはじまった。

料理長のおまかせで頼んだのだが、文句なくおいしい。
運ばれてくる料理は、どれも見目麗しく鮮やかだ。タコと香草のカルパッチョに、白身魚のバルサミコソース仕立て、パルミジャーノチーズとキノコのリゾット、バジルソース風味のラビオリ、新鮮なシーフードと野菜を美しく盛りつけられた一口カナッペはまるで宝石細工のようだ。美味しい料理につられて、お酒も会話もはずむ。
「ツナ君、今日もお仕事だったの?」
「あ、うん。ちょっと商談を」
「すごいね。お兄ちゃんやリボーン君に聞いたんだけど、ツナ君イタリアでお仕事がんばってるんだってね」
「ははは・・・」
いや、自分たちの仕事はがんばらないほうが世のため、人のためなんじゃないかな。
あまりおおっぴらには言えない『仕事』を思い出し、ツナヨシの顔がひきつる。
そんなツナヨシに酒が入り耳まで赤くなったハルがもたれかかる。
「ツナさん、このスーツとっても似合ってます~」
「え、そう?ありがと。ハルもその服かわいいよ」
「はひー、ツナさん!!不意打ちです!!ハレンチです!!」
「な、ハレンチって何だよ」
そんなこんなで、お久しぶりのやりとり。
ああ、癒される。やっぱ、この雰囲気ってスキだ。平穏ってスバラシイ。ヒシヒシと魂の幸せかみしめていたツナヨシにハルと京子たちは近況を語る。
大学での話や並盛町のあれこれ。講義やレポートにいかに奮闘しているか、サークル活動、コンパ、ハル感謝デーにスイーツ発掘、女子同士のショッピング。
華やかでキラキラとまぶしい。
――――いや、まぶしすぎる。
思春期を迎えてこのかた、ツナヨシの生活と言えば。
危険極まりない最強暗殺部隊の隊長と、マフィアのボスの座をかけて命がけの死闘。いけない薬物製造所の繊滅。ごつくて、強面なメンズに囲まれての会合に商談。家庭教師や鬼教官による地獄の修行。銃弾飛び交い血と硝煙に満ち満ちた抗争、抗争、また抗争。
――――とてもじゃないが人様にはお話できない青春時代だ。
殺伐としている。そして、ひたすらに後暗い。
かたや花の女子大生、かたや天下のボンゴレ・デーチモ。
同じ町で暮らしてきたのになんたる差か。
二人の話を聞くうちに、徐々にツナヨシの表情はどよ~んと沈んでいく。そうして、ふと思い至ったのである。
(あれ?もしかして、自分青春したことないんじゃ?)


そして、朝からごねるツナヨシがいるのだった。
遺憾ながら我らが『大空』は感受性が豊か・・・もとい、影響されやすいのだった。
「なるほど、そういうワケですか」
「まあ、ツナも同じ様なことしてるって!」
専属家庭教師をはじめ各分野のスペシャリストによる講義(じっちくんれん)、血と汗が飛び散る適度な運動(せんとう)、ちょっぴり危険で物騒な雰囲気漂う商談(コンパ)、物騒かつ剣呑な内容の報告書(レポート)の山。
「な?」
得意げにニカッと笑いかける山本はとても爽やかなのだが。
「「・・・・」」
――――――同じにするにはずいぶんと無理がある。
思わず沈黙したツナヨシと獄寺だった。

「って、とにかく!青春したいー青春したいー青春したいー」
とうとうツナヨシは最終手段にでた。つまりは『泣き落とし』だ。
ジタバタと手足をバタつかせ、ごねる姿はまるでアイス買ってとねだる子どもだ。
これが天下のドン・ボンゴレ。
威厳も何もあったもんじゃない。とてもじゃないが部下たちには見せられない姿に遠い目をした二人をよそに、ツナヨシは立ち上がると、すたすたとドアまで歩み寄り、取っ手に手をかけて宣言する。
「とにかくオレは青春してくるから!今日はボス休業!」
「じ、十代目!」
「まぁ、骨休みにはいいんじゃね?」
「山本!・・・確かに急ぎの案件はありませんが」
先日の物騒な案件も片づき、その事後処理も一段落した今は、とりたてて急ぎの仕事もない。
「じゃあ行って来るね!」
お許しをもらい、フン!と勇ましく『青春』の第一歩を踏みだそうとしたツナヨシだったが、ふと振り返ると右腕と親友に尋ねた。
「・・・そういや『青春』って具体的には何すればいいの?」
同じく青春初心者たちは固まった。
しみじみと、己の過去を振り返る三人の間に、非常に微妙な空気が漂っている。
(そうだよね。同じ暮らししてたんだもんね・・・)
「「「・・・」」」
執務室をいまだかつてない微妙な沈黙が支配した。


【次回更新予定日:2010.11.27】

作品名:青春アミーゴ 1 作家名:きみこいし