幼馴染パロ 短編集2
一番、頼りにしてるんです
<一番、頼りにしてるんです>
「仲間はずれ、よくない」
それは夜のことだった。
臨也が風呂に入っている間に、帝人と静雄はリビングでテレビを見ていた。
風呂に入る前に「帝人君一緒にはいろー!」という臨也の特攻はあったものの、いつものように静雄に撃退されて終わった。
その際の一番臨也にダメージを与えた攻撃は「入れば?静雄と」という帝人の言葉だった。
余談だが、その言葉のおかげで静雄にもダメージがいったため、リビング内部は何一つ物が壊れずにすんだのだが。
そうして2人仲良くテレビを見ていたのだが、ブブブ、と音がしたと思ったら、リビングの明かりが暗くなったり明るく回復したり・・と蛍光灯の限界がきたのだ。
慌てて物置に走り予備で置いておいた蛍光灯を取ってきたのはいいが、何しろリビングの天井は高い。
静雄でも置いてあるローテーブルに乗ってギリギリ指が届くかぐらいの高さだ。
そこで2人の目があった。
「届かなかったから、これが一番楽な方法だったんだよ」
「帝人君を肩車とかなにその羨ましい体勢!つまりアーンな部分が後頭部に直撃!?それなんてロマン!!」
「お前もう駄目だな。脳が」
小さいころは一緒にお風呂だのプールだの入っていたくせに、両手で赤くなった頬を押さえて体をくねらせる臨也はなかなかに視界の毒だ。
可哀想なものを見る目で、静雄の肩にまたがったままの帝人が見下ろす。
するとバッと顔を上げた臨也が、まだ赤みの引かない頬のままでぎゃあぎゃあと喚きだした。
「ずるいずるいシズちゃんずるい!俺だって帝人君肩車したい!仲間外れいくない!」
「てめぇが風呂入ってたのが悪いんだろ。タイミングの悪さを俺のせいにしてんじゃねぇよ」
「蛍光灯切れるタイミングわかるわけないし!くそシズちゃんのラッキースケベめ・・・風に吹かれた女の子のパンチラ見て喜んだところ帝人君に見つかって嫌われちゃえ」
「なんだそれ!?」
静雄の頭の上に肘を乗せて2人の会話を聞いていた帝人が、そこでぽつりと呟いた。
「臨也がいたとしても静雄に頼むけどね。背、静雄のほうが高いんだから」
「・・・」
「・・・・はっ、ざまぁ」
珍しく静雄が悪い笑みを浮かべて罵った。
優越感に浸る静雄と、言外に小さいと言われてヘコむ臨也。
対照的な2人の様子だったが、帝人の言葉には続きがあった。
いわく、
「それにお父さんみたいだし」
「・・・」
「・・・・ははははっ!ざまぁ!!」
普段通りの底意地悪そうな笑みを浮かべて今度は臨也が罵った。
しゅるしゅると縮むようにして、静雄がしゃがみこむ。
よいしょ、と小さな声で掛け声をしながら帝人がその肩から降りた。
地面の感触を確かめながら「お兄ちゃんよりお父さん呼ぶよね、こういう時って」とまだ呟いていたが、2人の耳には届いていなかった。
(お父さん・・・お父さん・・・・・・おとうさん・・・・・・・)
作品名:幼馴染パロ 短編集2 作家名:ジグ