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連鎖の連鎖

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僕は恋人だというのに、折角貴重な縁を結んだ相手である静雄さんから、淡い笑みさえ見せて貰ったことが少ない。例え敵意や殺気が沸騰しながら溢れ満ちていようとも、それはもう、とてもとても羨ましい限り。愛の対義語、無関心から途方もなく遠い鮮やかさを宿しているのだから。
ぎこちないひとは可愛い。けれど、それ故か時に厄介極まりなくもある。
躊躇いと羨望を天秤に乗せ、何時ものなぞり慣れた思考回路を疲れた顔してさまよい続ける。そのままの自分を写し出す水面に出くわしたのなら、きっとにらめっこをする為だけに足を縫い止める。
好きなんだからしょうがない。照れ屋さんなのだから仕方がない。しかし、それだけでは終われない。僕の周りにある空気にすら触れようとはせず、眩しいものでも見るかのように恋人は目を細める。様々な感情が伴う恋とは、夢だけで構成されてはいないのに。必ず人間として備える欲もあるし、欠陥もある。

では擦り寄ってみてはという疑問を投げ掛けられても、だんまりしか出来ない。
恋人のように特化した身体能力はない。寧ろ貧弱に思われるのか、恋人にも知り合いからもしょっちゅう何かしら奢られる。創始した組織力を操る術も電子機器を手放してしまえば一般人と変わりない。
だが、言い切るには早く僕の場合は些か誤っていて若干の訂正箇所がある。勿論、負の方向で。
不機嫌を電気エネルギーに変換出来ることを、知らない他者は自分よか一つだけ幸せで、自分にもまた他者しか知らない悩みなんて何処にでもありふれていることを理解している。所詮世の中は引き分けが仲裁役である。
今とは違い幼い頃、苛立ちが最高潮に達した時自分をコントロール出来ずに、よく困ったという思い出がふと苦味を引き連れて蘇る。良くて静電気人間、悪くて放電化物と呼称されて殻に引きこもる。実害として牙を剥いたなら、やっと出来た居場所さえ捨てて流浪する。悪循環を嫌になる程経験して、ようやく己を抑えるコツを掴んだと思えば心を許せる人は周りに居ない。もしも優しくされたとしても、喪失が恐ろしくては触れるなんて絵空事は無理だ。
理由にならないかもしれないけれども、一般と異なり恋人が丈夫で良かったと思うべきなのか、熟考して判断する猶予が少しだけ欲しい。凝り固まった心に触れられるのは、きっとこれが最初で最後の奇跡。



ここ最近は歩み寄りがないが、最初の一歩であった、夕日の放つ色彩に似た告白を未だ実直に信じている。

先に痺れを切らせるのは、果たしてどちらの臆病者。
作品名:連鎖の連鎖 作家名:じゃく