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如月ヒメリ
如月ヒメリ
novelistID. 13058
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これが最後、かな

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ぎぃ・・・、

立ち入り禁止と書かれた戸。それを軋ませながら開くと、まずはじめに目に飛び込んでくるのはぼろぼろの傘。何が入っているのか良くわからない箱たち。積み上げられた本の数々。
そして、
「どうかしたんですか、工藤センセイ。」
この、男子生徒。
制服に“2A”の組章を付けた彼は、僕を見るなり訝しげに訊ねた。
何故ここに来たのかという困惑と、早く帰れという気持ちが混ざり合っているのかなんともいえない表情をしている。
「うん、ちょっとキミに話したいことがあってね。」
いつもと変わらない笑顔でそう言うと、彼は初めて会ったときのように戸に寄りかかってなんですか、と返してきた。
僕はそんな大したことじゃないんだけどさ、ともったいぶってから笑顔を消す。
「他の学校に移ることになったんだ。」
「へぇ、そうなんですか。それはそれは。でも何でまたそれを俺に?」
不思議そうに訊ねてくる彼を見て、思わず笑いそうになった。
そう、そういうキミの表情が見たかったんだよね、僕は。
「そうだねぇ、なんていうかな。この学校で一番印象に残ってるのが四ツ谷くんなんだよね。」
それが?と言うように見てくる彼。僕はまた笑顔を浮かべて、この学校にさよならするならキミに言うのが一番かなと思って、とつぶやいた。
「それに、この学校で一番僕を楽しませてくれたのはキミだから。」
キミの怪談、結構面白かったよ?
「ちょっと目障りだったときもあったけど。校長との一件は面白かったよね。」
「皮肉かよ。」
不機嫌そうにつぶやく。
その姿がおかしくて、思わずくすりと笑ってしまった。
じろ、という視線を受け流しながら、僕はそれだけ、とつぶやく。
じゃあね、と言ってくるりと踵を返すと、後ろからサヨウナラ、センセイと声が降ってきた。
その声を聞いて、階段のほうに向けていた足を四ツ谷くんのほうに戻す。
「うん。四ッ谷くんも高校ではせいぜいがんばってね?」
言いながら、ぽん、と自分よりも高い位置にある頭を撫でた。
一瞬、彼の目が驚きで見開かれる。
「ち、何で知ってんだこの腹黒狐・・・ッ。」
彼は悪態をつきながら、視線をそらした。
そんな彼が急にかわいらしく見えて、僕はくすりと笑う。
そのせいで彼は、また不機嫌になっちゃったみたいだけど。

今度こそじゃあね、と言って足を階段のほうに向けた。
四ッ谷くんは何も言わない。

「バイバイ。」

つぶやいた言葉は、聞こえたのやら。

作品名:これが最後、かな 作家名:如月ヒメリ