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いじめかっこわるい

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「何ぞ黒田。貴様そのような性癖があったのか」
「んな訳ねぇだろ」
 毛利が大谷から『盟友、愉快なものが見られるぞ』と言われてわざわざ大阪城に来てみれば、確かに愉快なものが居た。否、毛利からすれば愉快というより奇妙なものであった。
 そこに居るのは筋骨隆々の男、黒田官兵衛……その筈である。髪の長さも眉の形も同じだ。しかし、その格好といったら。
「……貴様、いつから女装趣味に目覚めたか」
「だから違うって言ってるだろうが」
「ならば何故、斯様な格好をしている」
「知らん。気付いたらこんな風になってやがった」
 手枷の付いた手をだらりと下げて、黒田は大きな溜息をついた。ただそれだけの動きで布地が裂ける音がする。
 黒田が纏う服は、どうも南蛮渡来のものらしい。毛利はザビー教で同じようなものを見たことがあった。あれは確か、修道服と言うのだったか。黒地の布に金糸で縫い付けられた異国の図柄は簡素ながらも美しい。しかしそれは女が着るものだったはずだ。黒田が着ればどうなるのか、日を見るより明らかだ。
 肩は縫い目が悲鳴が上げるくらいにみちりと張り詰め、二の腕から手首までの袖は股引かと思うくらい密着している。厚い胸板を覆う黒布は無様なまでに横広がりし、いっそ裂けてしまえと思うくらいだ。腰から下の布は縫い付けられていないから楽なように見えるが、裾の長さが毛利の知っているものより短いような気がする。黒田のしっかりとした膝小僧が丸見えだ。これで歩こうものなら下帯が見えてしまいそうである。そんなものは視界の害悪だ。
 毛利はそう考えた。しかし、黒田は動かなかった。動けなかった。なにせ溜息ひとつで布が裂けそうになるのだ、いつものように歩こうものなら無様を晒すのは目に見えている。だから、気付いたときから動いていないのだろう。
 そこまで思考して、毛利はこの喜劇の仕掛け人は何処に居るのかと首を巡らせた。いつもなら壇上に上がって積極的に黒田を罵り倒しているだろう大谷を。
 ……ああ、そういうことか。
 自らの予測が少なからず外れていないだろうことを思い、毛利は口角を上げた。
「せいぜい足掻け」
「ちょ、おい、どうにかしてくれんのか」
「そんなことをしても利にならん」
 大谷は何処ぞから覗いているのだろう。どうしようもない状況に黒田を放り込んで、どういう行動を取るのか笑いながら眺めているのだ。毛利が呼ばれたのは見せびらかす意味合いと、縋る黒田を見たかったという黒い欲望があったからに違いない。
 だが毛利とて智将である。誰かの思い通りには動かない。胸の中でほくそ笑みながら、毛利は黒田を置いてきぼりにした。
 さて大谷は黒田に何をするのだろう。嫌味を飛ばしてあの引きつった笑いをするのだろうか。毛利にはそんなこと興味がない。呼び寄せた理由はこの無様な格好をした黒田を見せたかっただけ、というのもあの男にはあり得る話で、ほとほと呆れた。
 取りあえず、あの害悪を視界から外せただけ良かったと思うべきか。
作品名:いじめかっこわるい 作家名:ケン太郎