twitter log #01
姿を思い浮かべたら駄目だ。声を思いだしたら駄目だ。どんな指先でどんな動きでどんな温度でどんな声でどんな言葉でどんな表情なのかを考えたらもう駄目だ。ここにはいないのに。海の向こうにしかいないのに。それでもあいつがここにいたらだなんて、考えてしまったらもう駄目だ。/まよなか,fe
0629 20:30
かたかたとキーボードを叩く音。寝てていいよ、言われたけれど否と言った。ちらり、フレームの向こうから視線を向けて男が笑う。長い手が伸びて、突っ伏す俺の頭を撫でた。「お前のおかげで淋しくない」低い囁き声に、これだから狡いのだ、なんて、考えた自分を穴に埋めたい。/うそつき,fe
0701 21:10
日付を確かめて嘆息する。お前はきっと泣いてるんだろう、うずくまって震えてるんだろう? 毎年のことだからもうすっかり覚えてしまった。泣かなくていいんだよ、言っても聞かないのは分かってる、…でも。(塩辛いこの海をざぷざぷと掻き分けて、その涙を拭いに行けたらいいのにね、)/涙の海,fe
0703 18:48
ぱさぱさしたマフィンも、石のように固いスコーンも、やたら水っぽいケーキも、決して美味しいとは言えない。罪なき食材の為にも俺が作った方が遥かにいい。それでも、「美味いか?」得意げに可愛い顔して彼が笑うもんだから、結局俺はフォークを口に運び、ouiと笑って見せるのだ。/0714,fe
0714 21:12
ベッドの端に腰掛けた俺の膝を跨いで座った女の、美しい脚が気ままに揺れて真白に光る。「はしたないな」言ってやれば、どっちが、言いながらネクタイを解いて女が笑った。こんなとこ見られたら即罷免ね、肌に這わせた俺の指に自身のそれを重ねて囁く声は鼻で笑っておく。/にょ仏英
0718 16:02
彼があまりにも長く画面を見つめているから、「寝る時坊ちゃんいないと淋しいな」目の前、机に突っ伏して呟いてみる。そうして目線を上げれば真赤になっている彼の顔。見つめる内にぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。「仕方ねえな、ばか」その後タイピングの速度が上がったのが勘違いでないといい。/fe
0719 10:48
イギリスと紅茶を飲むと砂糖代わりに金平糖が出されることがある。「古くなった星を取替える時に分けて貰ったんだ」だからこれは元・空の星なんだぜ。得意げに笑う、真偽の程は分からないけれど、淡く光る金平糖は綺麗で甘くて、彼は嬉しそうで。だからそれでいいことにしておく。/fe
0720 18:15
※元ネタは児童書『とび丸竜の案内人‐時間をとんだ竜と女の子の冒険』。とび丸竜の暮らす世界で人間界の四季をコントロールしてるとかで、太陽や月や星は全てお菓子で出来てる。
大きな手は決して不器用ではなくて、思うとおり俺を掻き乱して抱き潰す。声をあげれば男の唇が吊り上がった。「かーわいいの」笑う声が憎くてならない。そのくせ男は指の速度を落としてしまった。思わず目をやって後悔する。欲しがれと、清浄な青が浅はかな俺を誘っていた。/浄土にて,fe
0722 22:27
何で俺がと呟けば「坊ちゃんの方が上手く塗るんだもの」女は笑う。嘆息し、寝転がった彼女の横に腰を下ろした。伸ばされた手をとり、毒々しい朱を爪先に乗せてやる。全く慎ましやかでなくて、だからこそ人を引き付ける色だ。なあ、お前にこれ以上相応しい色もないだろう?/にょ仏英
0729 14:44
作品名:twitter log #01 作家名:はしま