恒例行事
さあ今から始めるぞ・・・と言わんばかりに、本当にうれしそうにしている。
何を始めるかと言えば、我が家恒例の『落ち葉かき』である。
寺の裏手には、あまり広くはないが、雑木林が広がってる。
今日は、秋も深まり葉も落ちきったとばかりに、うちの母親から招集がかかった訳だ。
四月一日は、夏のうちから『落ち葉かき』の話を聞き、「是非呼んでくれ。」と言って、母親を喜ばせていた。
今もふたりは、割烹着を着てハチマキを巻き、準備万端である。
何がそんなに楽しみなのか以前聞いてみたら、「だって、きれいになるじゃないか。別に深い意味なんてないぞ。」と、逆に不思議そうな顔をされた。
ま、実際あのふたりは、楽しいかもしれない。大きな熊手で落ち葉を集め、ブルーシートに掃き込んでくるだけなのだから。
シートの落ち葉が溜まったら、シートごと引きずって来て、一ヶ所に集めるのは、俺の役目だ。実は、落ち葉かきより、こっちの方がずっときついのだ。あのふたりは、知ってか知らずか「静ちゃ~ん、早くシート持ってきて~。」なんて、ユニゾンで言ってやがる。
集めた落ち葉は、ある程度は堆肥を作っているようだが、そのほかは近所の農家の人が取りに来る。お礼と言って毎年さつまいもをたくさん持ってきてくれる。
午後からは、侑子さんたちも集まって、焼き芋をするらしい。ま、あの人のことだから、芋焼酎と他のつまみを準備するように、四月一日には言ってあるんだろう。ひょっとしたら、きつねのおでん屋も来るかもしれない。ちょっと楽しみだ、あそこの餅巾着はうまいから。
朝から夜まで、きっと四月一日は働き通しになるはずだが、明日も休みだし(絶対うちに泊めてやる)、あいつが楽しそうにしているから、まあ俺的には何の文句もないけどな。