寒空デート
12月。
街はクリスマスムード一色に溢れ。
鮮やかなイルミネーションが辺り一面を埋め尽くす。
きらきら輝く夜の街は幻想的で、
あちこちに、仲睦まじい恋人達の姿が見える。
手を繋いだり、肩を抱いたり…
ちら、と、辰巳は隣を歩く尊川を横目で見やる。
折角二人で出掛けたはいいものの、
何だかあまりデートらしいことをしていない気がする。
周りにいるカップル達のように、手を繋いだりしたら、
彼女はどう、思うだろうか。
「…辰巳くん?」
思わず立ち止まって考え込む辰巳を、尊川が不思議そうに見上げる。
「…、あの、さ。」
しばらく逡巡したのち、辰巳は尊川の左手を取った。
白くて細い、綺麗な彼女の手は、驚く程冷たくなっていて。
辰巳は尊川の手を握り、そのまま自分のコートのポケットへ導いた。
「た、辰巳く…」
「寒いから…こうすれば、少しはあったかいだろ…?」
何だか気恥ずかしくなって、辰巳は顔を逸らして言う。
尊川は、一瞬驚いたように目を丸くして、
それから嬉しそうににこり、と微笑んだ。
「うんっ」
ポケットの中で、繋いだ手を強く握りながら、
幸せそうに、二人は笑いあった。