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良くも悪くも

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駅につくと、イギリスは既に来ていて、ロータリーに車を止めて待っていた。一昔前のかたちで無駄に目立つ車を一目で見つけ、フランスは近付いていった。
開けようとすれば鍵がしまっていたので、コンコンと窓を叩く。はじかれたように顔を上げたイギリスは、両耳にイヤホンなどを入れている。
珍しいな、とフランスは思った。というか、初めて見た。イギリスが音楽を聴いているところなど(しかも携帯の音楽プレーヤーで)、今まで見たことがない。
がちゃり、と音をたてて鍵が開いたのでフランスは車の中に入った。
「パンクか?」
「は?」
最初にそう問えば、イギリスは怪訝そうに返答してから意味を掴み、あっという間に仏頂面になる。
「うるせぇよ」
否定はしないらしい。
イギリスはそそくさと音楽プレーヤーを片付け始め、なんだか惜しいと思ったフランスは、その手から音楽プレーヤーを奪ってみる。
「なんだよ!?」
「なによ、ちょっと見るだけじゃない」
「なんで見んだよ」
「別に。ちょっと気になっただけ」
素直に言えば、イギリスは小さく舌打ちをしてからエンジンを掛けた。その横でフランスはプレーヤーをくるくると弄って、イヤホンを耳に入れる。
「イヤホン洗って返せ」
「お前なに?別にいいけど、使い物にならなくなって返ってくるからね」
訳の分からない要求だ。実にばかばかしいとフランスは思う。
「お前の耳に突っ込んだもんなんか使えねー」
「お前いつも突っ込まれてるんだけど」
「死ね」
揶揄れば、物騒な一言で片付けられた。都合の悪いことになるといつもこれである。
適当に選んだ曲を再生すると、実に派手で煩い音楽が流れてきた。しかも、音量がとても大きい。耳が壊れそうで、フランスは顔を顰めた。
「何これ?音量煩すぎ」
「文句あるなら聴くな」
「こんなので聴いて、お前耳遠くなんじゃねぇ?」
「問題ない」
煩い音楽にのせられて、実に激しい内容の歌詞が流れてくる。野蛮と形容しえなくもない。
「見かけによらずだな」
「あん?」
「いや、むしろお前らしいかな」
フランスから言わせれば、とてもではないが趣味が良いとは言えなかった。フランスはもっと落ちついた音楽で、柔らかな言葉で紡がれた歌詞のほうが好みである。
「どういう意味だ髭」
「どうもこうもそのままの意味ですよ」
「ふざけんなくそ野郎」
「なんでキレてんだよ。お前こういう音楽好きなんじゃねぇの?」
ふん、とイギリスは鼻を鳴らす。意味わかんねぇ。フランスは思わず呟く。
「お前からは何言われてもムカつく」
「何だそりゃ。まぁ、お前だからね」
特に傷つくこともない。フランスは煩いロックに飽きて、プレーヤーを止めた。電源を落として、イヤホンを纏めていく。
「野蛮と形容しえなくもない音楽」
「黙れ」
「けれどよく言えば、」
イヤホンを複雑に結んでから、プレーヤーをイギリスに差し出す。
「情熱的かな」
イギリスはイヤホンを特に気にすることもなくプレーヤーをポケットに仕舞う。おそらくもう今のイヤホンは使わないのだろう。
「お前からは何言われてもムカつくんだっつの」
「欲情したかも」
「野蛮なロックでかよ。変態」
信号が赤でちょうど車が止まったから、キスをした。野蛮で、噛み付くようで、よく言えば情熱的な。
「あまりに扇情的な歌詞だったからね」
「俺の趣味だ」
「悪趣味」
そうしてまたキス。気が付いたら信号は変わっていて、後ろから響いたクラクションで中断させられた。「Shit!」だなんて吐き捨ててから車を発進させるイギリスである。とんだ男だとフランスは思った。
「ま、俺んちの音楽のほうが勝ってるけどねー」
「音楽に優劣なんかあるかよ」
なかなかの正論をイギリスは言う。
「今度聴かしてあげる」
「ぜってー嫌だ。ぜってー聴かねぇ」
「あまりに素敵でイギリスだって欲情しちゃうよ」
「お前、音楽をなんだと思ってるんだ?」
馬鹿みたいな会話をしながらロンドンの街中を見た。心なしか、いつもより素敵。


作品名:良くも悪くも 作家名:幻裕妃