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【虹が出たなら】 スパーク5サンプル

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 とある国の白い森に、一匹の若い虎が住んでいました。名前を、茶渡、と言いましたが、その名前を呼んでくれるひとはこの森にはいませんでした。
 それは、彼がここいらでは珍しい白地に黒い縞模様をしていることや、体が森に住む他のどんな動物よりも大きいことが原因で、みんな彼のことを怖がっているからでした。
 口下手なりに挨拶だけでもしようとするのですが、顔が怖い声が怖いとと悲鳴を上げられ、逃げられてしまうのでちょっとした話し相手を作ることさえできません。
 時々ケンカを吹っ掛けてくるものがありましたので、うまいことその相手をして友達になろうと思うのですが、茶渡は自分が思っているよりもずっと力が強く、手加減したつもりでも相手をコテンパンにしてしまい、それを見た他の動物たちはますます彼に怯えて近づかなくなってしまうのでした。
 
 一人ぼっちの寂しい日々を送っていた茶渡でしたが、最近ちょっとした楽しみができました。それは天気の良い午後に白い森と隣の黒い森の間にある、クローバーの野原へ行くことです。
 茶渡は、そこにやってくる一匹のうさぎが好きでした。


 初めてそのうさぎを見たのは、白い森の悪い奴らから売られたケンカを買って一暴れした帰りのことでした。
 茶渡は行きがけに見つけたこの野原で一休みしようとやってきて、葉の生い茂る中に先客がいるのに気付き、足を止めました。そうして相手に気付かれないように息を潜め、そうっと近づいて、重なり合う葉が少しへこんでいる所を覗き込んだ途端、どきりとしました。
 そこにいたのは、小さな小さなうさぎでした。日向ぼっこのまま眠ってしまったのでしょう、蹲って気持ち良さそうな寝息を立てています。その寝姿のあまりの可愛らしさに、茶渡の両目がきらきらと輝きました。
「…うさぎ」
 思わず呟くと、うさぎの耳がまるで返事をするように片方だけぴょこりと動いて、それに驚いた茶渡はびょおんと後ろに飛び退き、気付くとそのまま逃げるように森の中を走っていました。
 途中、ひどく胸がどきどきするので走るのを止め、歩いてみたり立ち止まってみたりしました。が、どきどきは治まりません。どこか具合が悪いのか、と早目にベッドに横になりましたが、治まるどころかそれはうるさいくらいに胸を内側から叩いてくる上に、瞼を閉じるとうさぎの姿がちらついて、その晩は全く眠れなかったのでした。


 その日から天気が良い日には必ず野原へやってくるようになったのですが、先に言った通り森の動物たちから怖がられているせいで、うさぎに姿を見せることができません。
 だからいつも野原の側に生い茂っている低木の陰に蹲って、うさぎが持ってきたお弁当を食べたり、日向ぼっこをしたりしているのを幸せな気持ちで眺め、陽の色がオレンジ色に変わりうさぎが帰ってしまうと、ほんのちょっと寂しくなって自分も家へ帰るのでした。
 そうしているうちに、姿を見せずに声だけかけるのはどうだろう?と思いつきました。
「あぁそうだ、きっと話しかけるだけなら、大丈夫だろう」
 ですがやっぱり、今日も次の日もその次の日も、何もできずにうさぎを眺めているだけで日は過ぎていくのでした。


 うさぎの名前は、石田、と言いました。彼は白い森と黒い森の間にある、小さな銀の森におじいちゃんと住んでいましたが、今は一匹です。
 彼は誰が見ても可愛らしい姿をしていますが、性格が少々変わっていて他の森の動物と関わるのを好まず、なるべく誰とも会わないようにして穏やかに暮らしているのでした。
 家の仕事を一通り終えた石田は、その日も特製のジャムとスコーンのお弁当を籠に入れてクローバーの野原にやってきました。いつもはそのままもすもすとクローバーの中を歩いて、草むらからちょうど良く突き出ている石に上がってまずお弁当を広げるのですが、今日は違いました。
 何日か前から野原の縁に垣根のように茂っている木の中から、何かが自分を見ているのが気になって仕方がなかったのです。ひとと関わるのは好きではないけれど、観察されるのは嫌いなので、一言文句を言ってやろうと思っていたのです。
 昨日はついに、茂みの間に太い尻尾が揺れているのを発見したので、今日は思い切ってその茂みに近づいてみることにしたのでした。