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キャプテンの日常は簡単には変わりません

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「ほんっと宇宙人のヤツら許せないよなー!おれたちの学校潰したくせに勉強は残すんだからさあ」
「円堂、念のために訊くが・・お前は宇宙人が学校を潰したことを怒っているんだよな・・?」
「当たり前だろ!なに云ってんだよ、鬼道」

それならいいんだ、とため息を吐いた俺の心情なんかきっと円堂にはわからない。案の定、不思議そうな顔で首を傾げる円堂に、ああこれが良くも悪くも円堂守なんだよな、と曖昧に笑ってみせた。

「そっか、キャプテンは勉強嫌いなんだね」

そう云って、どこか困ったような笑みを円堂に向けたのは、豪炎寺に代わるストライカーとしてつい最近雷門イレブンに加入した吹雪だ。円堂の隣で同じように問題集を広げている。
「吹雪は好きなのか?」
「ううん、嫌いだよ」
「なーんだ。一緒じゃんか」
「そうだね。でもまさか地上最強のチームを作る旅の途中にもしっかり勉強の時間が取られているとは思わなかったなあ」
「だよなー」

そしてしみじみと問題集に視線を落とすふたりに、中学は義務教育なのだからむしろこうしてちゃんと勉強の時間を作ってくれる瞳子監督に感謝すべきなのだ、と云ってやりたい気持ちをぐっと堪える。今そんなことを云ったところでふたりのやる気にはなんの影響もないだろう。
しかしそれにしても、と吹雪を見やれば相変わらず真っ白な問題集を前にシャープペンシルをくるくると回している。そうやって手を動かすことは集中力を高めることに役立つと聞いたことがあるけれど、吹雪のそれは、どう見ても手持ち無沙汰ゆえの所作だった。

「円堂、吹雪。お前たちいいかげんに・・」

と見かねて口を開いたところで、視線の先により効果的な人物の姿を認め、言葉を切る。
突然黙った俺を怪訝に思ったらしい円堂はただ不思議そうな顔をしていたけれど、円堂の背後に近付く存在に気付いた吹雪は声をかみ殺して笑い、問題集に視線を落とした。くるくると絶え間なく回っていたシャープペンシルもぴたりと止まっている。
円堂がようやく異変に気付き振り向こうとするのと、ぱしん、と小気味のいい音が響くのは、ほぼ同時だった。

「円堂!」
「ッ・・たー!」

俺と吹雪はこっそりと視線を合わせ小さく笑う。

「か、風丸?!なっ、ちょ、いきなり叩くの、反則!」
「せっかく鬼道に時間を割いてもらっているのに全く進んでないじゃないか!」
「ちょっとは進んでるって!つか英語なんて別にいいじゃん」
「次は世界だーなんて云ってたのはどこの誰だよ」
「そ、それは・・や、でも一之瀬や土門がいれば通訳してくれるし!」
「ふたりともエイリア学園の件が落ち着いたらアメリカに帰るって云ってた」
「じゃ鬼道が、それに風丸も・・!」
「円堂・・たのむから日常会話くらいはできるようになってくれ」
「それなら大丈夫だって!言葉がちがっても気持ちは伝わる!」
「円堂・・・」

盛大にため息を吐き、風丸は首を横に振る。その動きに合わせて風丸の長い髪がゆらゆら揺れた。
風丸は円堂と長い付き合いだと聞いているが、毎度こんな不毛な問答を繰り返しているのに風丸の円堂に対する態度は一切変わらない。幼馴染というのも案外大変だな。いつだったか風丸に云ったことがある。もう当たり前すぎて大変だとかわからないんだ。苦笑混じりに答えた風丸は、それでもどこか楽しそうだった。

「ああもう!そんなこと云うけどさ!吹雪だって同じなんだぜ?!」

分が悪いと悟ったのか、円堂は吹雪を指差す。
どうせ怒られるならひとりよりふたり、と思ったのかもしれない。確かに吹雪も一度怒られるべきではあるな、と俺も頷く。

「吹雪はちゃんとやってるよ」

「え?!」
「は?!」

同時に立ち上がったのは、俺と円堂だ。

「円堂・・自分が出来てないからって吹雪も巻き込むな」
「ちがっ・・え?!だってさっきまで本当に真っ白で・・・な、なあ、鬼道?」
「・・・・・・ああ」

ここは円堂に同意するしかない。円堂の云う通り、本当にさっきまでは吹雪の問題集には何も書かれていなかった。

「ごめんね、キャプテン」

そう謝った吹雪は困った顔をしてはいるものの、さして申し訳ないと思っている様子はない。

「僕、勉強はきらいだけど、できないわけじゃないんだ」

えへへと笑う吹雪に円堂はただ口をぱくぱくとさせている。それもそうだ。同じフィールドにいると思っていた相手が実は全く別のところにいたのだから。
しかも先ほどのほんの僅かな時間に終わらせてしまったらということはもしかしなくても、かなりできる、という部類に入るに違いない。そんなことは俺だって予想外だ。

「ごめんね、キャプテン」もう一度同じ台詞を口にし、吹雪は席を立つ。残された俺と円堂は裏切られたような気持ちで、しかし確かに吹雪の言葉に嘘はなかったから責めるわけにもいかず、狐に摘まれたような顔を見合わせていた。





(豪炎寺といい、吹雪といい!)
(ああこれだからストライカーってやつは・・・!)