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ふうりっち
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novelistID. 16162
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=2= プロイセン・ブルー(仮)

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遠くに見えるのは地平線だろうか。荒涼とした大地がどこまでも続き、そして、ここで戦いが起きたのかもしれない。足元は幾人の血で染め上げられたのか、土と血痕が混じり合い所々赤茶けている。 
 目を凝らせば、遠くには蜃気楼のように霞んだ山影が見えた。青みがかった山肌の頂きでは降雪があったのか、うっすら雪化粧が施されている。それなのに天空に昇るのは、灼熱を放つ太陽。
 強い日差しによって涸渇した大地には動物の姿ばかりか枯れ木すらない。それなのに、霞んでみる山すそには鬱蒼と茂る原生林が見うけられた。それは蜃気楼がみせる幻なのか、それとも本物なのか、判断はつかない。ただ足元の情景と遠くの風景には、落差がありすぎることだけは分かった。
 そんな奇妙な場所に佇む人影は---ふたつ。

「この国より我らが王が姿を消してから、幾度も大きな戦いが繰り返されてきました」

 気づくと、肩を並べるようにすぐ隣に佇む若者がいた。肩の上で切り揃えられた漆黒の髪を渇いた風になびかせ、若い顔立ちの青年は、白い法衣を纏い、語りながらこちらを見上げてきた。

「王…?」

 問いかけるつもりはなかった。しかし、誘い水のような青年の視線に導かれるように気づけば言葉を口にしていた。真に不思議な魅力を漂わせる青年であった。そんな彼がは小さく笑うと、容貌がさらに幼くみえる。

「我らが王とは……”蘇生王”であられますよ」

 青年の声に頷きかけるも、自分の双眸に映る漆黒の法衣に目を疑う。
 いつの間に纏ったのか、黒き法衣が全身を覆っていた。体調を崩してからというもの、ずっと寝台に伏せることが多く、このような法衣を纏うのは久しぶりといえた。しかし、聖職者である自分が「黒」を纏うことに違和感が拭えない。それに青年とは対照的な色味のせいか、法衣に重く苦しさを感じてしまう。
 状況が読み込めないこともあり経緯を青年に問いかけようと振り返った瞬間、彼の双眸が突如、怪しげに煌いたのは気のせいではない。

「長らく任務から離れられたとはいえ、ご自分の役目をお忘れですか--神子」

 頭一つ低い青年が固い声が告げる『神子』という言葉。聞き覚えなどあるはずなのに、胸が高鳴る。
 まるで高熱を発したときのような悪寒に襲われる。しかも、何かに共鳴するように、全身が戦慄く。

「神子…間もなくお迎えにあがります。しかし、邪魔するものがあらば―――」

 青年の手から放たれた荒涼とした大地すら焦がすほどに、激しく、熱く、強くごうごうと音をあげて燃え上がる炎。その中に、見知った人物が居ることに気づいた。
 たとえ炎越しだとしても、その容貌を見間違えるはずが無い。
 ドイツは助けに向かおうとしたが身体が動かないことに気づくと、隣を睨み、唸るようにほえた。

「お前っ…なんでこんなことをするんだ! 離せ!!」

 呪術でも使っているのか、両足がその場から離れない。懸命に身体を揺すってみても、術が解かれる気配はない。その間にも業火では、兄が、プロイセンが、苦しそうにもがいている。
 
「兄さん! 兄さんッ!!」
「邪魔する者は、このように災いが降りかかりますので、お気をつけください」
「ちょっと待ッて、まだ何も終わって…!」

 青年がやうやうしくお辞儀をするので咄嗟に声をあげた瞬間、視界が転じ、見慣れた天井が飛び込んできた。

「……夢、だと?」

 天井を見つめながら、しかし、あまりにも現実味を帯びた夢にドイツの心臓は逸っていた。無意識に額を拭えば、汗が吹き出している。

それを手の甲で拭い、ベッドから半身を起こし辺りを見渡すも、やはり室内に変わった様子はみられない。
  ベッドといくつかの家具と洗面所があるだけの簡素な作り。勿論、装飾品はなく、壁に掛けられた聖職者としての法衣が目立つくらいだ。
 それでも、夢が現実になっていないことに安堵すると、小さくため息をもらした。