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嵐のあとに

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ちょお聞いてくれへんか、と謙也さんがなんだかこの世の終わりのような、いやこの例えはすこし大げさか、例えるなら、下痢なのにトイレが全部埋まっているときのような鬼気迫った顔をしながら俺の肩を叩いてきたのでとりあえず俺はポケットからウォークマンを取り出してイヤホンを耳にいれた。

「聞いてくれませんか財前くん!!!」

イヤホンは悲しいかな謙也さんにぐっとひっぱられて耳から抜かれた。ああもう昼休みに後輩のクラスに来てまでなんやねん。ほんまめんどいっちゅー話です。

「15文字以内で簡潔にどうぞ」
「小春に彼女ができた」
「・・・見事におさめましたね。その冗談」
「いや冗談ちゃうくて!!」

先輩は俺の肩をつかんでぶんぶん左右に振る。うわあもうほんまうざいわーこの先輩、ばくはつしてくれへんかなー。

「小春にやで!小春やで?!」
「それ確かな情報なんすか」
「ユウジが言うててんで?!そのソースは確かすぎるやろ!」
「あー・・・まあ他の奴が言うよりは」

つうかユウジ先輩こそ大丈夫なんやろか。あのひと小春先輩に彼女とかできたら発狂しかねないと常々思っててんけど。けどまあ謙也さんとそんな話ができるくらいの余裕があるならまだ大丈夫だろう。ところで俺は5時間目の英語が当たりそうなのでそろそろ予習をしたいのだがいつになったらこの鬱陶しい先輩は帰るんやろか。ちょおだれか引き取りにきてくれへんかな。師範あたりがええな。部長はたぶんうざさが増す。

「なんで小春にできて俺にできへんのや・・・!」

謙也さんはほんと信じられないと言わんばかりに俺の机にうつぶしてわっと泣く真似をした。なんやねん、結局そこかい。そういう愚痴かい。今日この数十分で後輩から何回うざいと思わせたら気がすむねんこの先輩は。

「まー謙也さんはそういうとこがあかんのですわ」
「そういうとこってなんやねん」
「そういう鈍感なとこっすわ」

いや俺が謙也さんが好きとかそういうことではなく、後輩から結構本気でうざがられている今の状態に気づかないといった意味でである。

「・・・俺のこと好きな子もおるかもしれへんってことか」

やはりそっちに勘違いしたか。まあええわ、めんどいし、おもろいし。なんか謙也さんは急にきらきらしはじめた。はいはいスタースター。

「はあ、まあ、そういうことっす。てなわけで俺はべんきょーするんで、先輩とっとと教室帰ってくれませんかね」
「なあ財前」
「なんすか」
「俺が彼女つくったらさみしい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ?」

しまったあまりにも阿呆な質問にうっかりものすごい時間を使ってしまった。え、なんでそうおもう。このひとは真剣な阿呆なんだろうか・・・?どこをどうつなげたら俺がさみしいかもしれないという疑問に至ったのかが、もうはなはだ疑問である。相方ながら意味不明すぎてもうこのひととダブルスパートナーやってく自信すらなくなるわ。

「ユウジがな、さみしいさみしい言っててんけど、やっぱダブルスパートナーとしてはさみしいもんなん?」
「いやそれはあっこが特殊なだけですわ」
「ほな別に俺に彼女ができてもええっちゅーんやな?」
「つうか謙也さんできへんやろ、まず」
「・・・ああそうか」

そこで納得されてもなんだかなあという感じなんだけども、まあ俺としては謙也さんに彼女がいようがいまいが、別に大した問題でも支障でもなく、というか正直心底どうでもいいことなので、もうあまりつっこむことはしない。このひとの平和な脳内にはもうついていけない。このひと脳みその中に花畑でもあるんちゃうかなあと先輩相手だが思わずにいられないくらいやわ。

「ま、できへんっちゅーよりはつくらへんだけやけどな!」
「負け惜しみですか」
「ちゃうわ!今はテニスのが大事やしな!」
「あのそれほんま聞いてて痛々しくて逆に泣けてきますわ」
「あのなー!財前のが大事ってことでもあんねやで!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


しまったこんどは返事ができなかった。


「お前との時間のがいまは大事やしなあ。そりゃ彼女は欲しいけど、ま、今じゃなくてもええかもな、小春はやっぱうらやましいけど、っちゅーわけでそろそろ予鈴鳴るし、教室帰るわ!また放課後な~」


阿呆でスピードだけに定評のある謙也さんは、言いたいことだけ好き勝手、俺の反応さえ見ないで、語った後、さわやかに速やかに教室から出て行ってしまって残された俺はもうとりあえず今さっき何が起こったのかを、何を言われたのかを必死に整理するしかなく、いや、あのばかに他意はないんだろーが、しかしそれにしても、相手が女子やったら確実告白と勘違いされるような爆弾発言ではあった。ちゅうかおれもなにうっかり言葉につまったりした。あんなん、阿呆ですかの一言で流せたことだというのに。くそう。くやしい。うざいくせに。なんでこんな。

「財前、忍足先輩って直球やなあ」

後ろの席のクラスメイトに話しかけられてはっと我にかえる。直球どころかもはやデッドボールだ。あんなん例えたらただのイノシシみたいなもんで、突進しかしらへんだけで。

「・・・ただの阿呆やわ」

それでもその阿呆に認めたくないけどときめきかけた自分が、一番阿呆かもしれへんなあ。結局英語の予習もできへんかったけど、まあええわ。机につっぷしたら案外につめたくてびっくりした。いや、おれの、ほっぺたが熱なった、だけかもしれへんけど。






・・・そうして結局小春先輩に彼女情報は、ユウジ先輩の勘違いであったことがわかって、今日のベストオブ阿呆はユウジ先輩に譲ることなる。まあ若干そんな気はしていたけども。謙也さんはよかったーだなんて手をあげて喜ぶし、ユウジ先輩は泣きだすし、小春先輩は呆れて冷たい目で二人をみていた。

ああなんや今日も、平和やなあ
作品名:嵐のあとに 作家名:萩子