【銀魂】おもちが食べたくなったら、うさぎさん【銀神】
月には兎が。餅をついて。きっと彼女を待っているのだ。
「帰りたい?」
銀時は不意に(彼の中では一応それなりの順序があるのだが)、傍らの少女に尋ねた。少女――神楽は、顔を少し上げ、銀時をその丸い瞳で見つめる。そうしてから、どこに?と尋ね返した。続けて銀時は家に、と云った。帰りたいと答えたのなら、何処からか金を借りてでも返してやろう、そう思いながら。幸い伝手は四方にある。仲間が餅ついてまで待ってんのに、帰さないってのは可哀想だよなあ、口をついて出そうになった言葉。寸でのところでつばきと一緒に呑み込む。
「別に」
忘れた頃に返事をする神楽に、やはり彼女の中には迷いがあるのだろうか、銀時は思う。可愛い兎さん、正直になってください。そうでないと、俺はお前を帰そうと思わなくなってしまうよ。
「地球、ご飯おいしいネ」
私ラーメン大好きアル、無邪気な顔で神楽が云う。銀時はゆるい笑みを浮かべて彼女の顔を眺めた。ああ、この兎さんはまだ子供で、新しいものが大好きなのだ、銀時はそう結論付けた。
立ち上がりながら、銀時は神楽の頭の上に手を乗せる。
「ま、餅が喰いたくなったら何時でも云えよ」
その銀時の言葉に、神楽は不思議そうに首をかしげた。
「アイス食べたいヨ銀ちゃん」
頭の上に置かれた手を握りながら神楽は云った。銀時はその手から伝わる高い子供の体温に満足感を覚えながら、アイスを買う約束をした。
作品名:【銀魂】おもちが食べたくなったら、うさぎさん【銀神】 作家名:おねずみ