日常的恋愛幸福論
こんな僕を貴方は好きで、愛してくれて
貴方といられる、それだけで凄く幸せだけど
“僕”とか、
“貴方”とか、
“恋”とか、
“愛”とか、
“好き”とか、
“嫌い”とか
それ以外にも、もっともっと
“昨日、なに食べました?”とか、
“昨日、なにしていましたか?”とか、
“昨日、何回僕のことを思い出してくれました?”…とか
そんなことを、僕は貴方と話したいんです
「それよりも俺は今帝人君が食べたい」
…馬鹿
「つまりナニがシたい」
…ばか
「…帝人君ってば、あんまり馬鹿馬鹿言ってると、」
きみのことなんか、わすれちゃうよ?
「………ばーか、」
――なんて、会話をしたのはたった今のこと
現在僕がいるのは、臨也さんの新宿の事務所兼自宅
ソファーに腰掛ける臨也さんの膝の上に座らされて、
横からから腰に手を回されてぎゅうっと抱きしめられています
甘いような苦いような声とか、温い体温とか、感じるもの全てにドキドキしてしまって
臨也さんさっさと離れてください、とか言えない、とか正直笑えない
はい、惚れています、えぇ心底惚れていますともそれのなにが悪いんですか
恋愛は惚れた方が負けとか言うけど、その通りだと思わずにはいられない
でもどうしてよりにもよってこんな人に惚れちゃったんだろう
自覚したのは最近だけど、惚れてしまったのはいつか分からない
とりあえず、人生の選択を間違えた気がしないでもないけど、もうしょうがない
今現在この人の腕の中が心地好いとか思ってる時点で末期だ
諦め、でも満更でもない、そんな溜息を一つ吐いて
僕は臨也さんと視線を合わせた
「ねぇ、臨也さん」
「んー?なに?」
「僕、臨也さんのこと好きですよ」
「っ……み、帝人く」
「…っていうのは嘘です」
「………ちょっと、酷いよ帝人君」
ついにデレてくれたのかと思って喜んだのに、俺馬鹿みたいじゃんか
とか言いながら、臨也さんは僕の肩にこつんと額をくっつけて俯いてしまう
その姿が可愛くておかしくて、僕は思わず笑ってしまった
それが不満なのか、臨也さんはその綺麗な顔を上げて不満を露にした顔で僕を睨んでくる
「みーかーどーくーん?」
「…ごめんなさい、臨也さん」
名前を伸ばしながら言う時は、かなり不貞腐れている証拠
滅多に感情を顔に出さない臨也さんの珍しい姿
「本当にもう……悪いとか思ってないでしょ」
「思っていますよー」
「嘘」
「嘘じゃないです……ねぇ、臨也さん」
「…なにさ」
「“好き”、じゃないんです」
「……だからもう」
「“大好き”、なんですよ。僕、」
臨也さんのことを、さらっとそう言い切ろうとした、けど
やっぱり恥ずかしさとか恥ずかしさとか、あと多分他にも色々な理由で段々と声は小さくなってしまった
最後の方なんて、直ぐ近くの臨也さんにも届いただろうか、なんて思うほど
臨也さんの方に顔を向けるのも出来なくて、視線を宙に彷徨わせる
一秒、二秒、三秒、…はい、応答・反応無し
さてどうしよう、腕の拘束は相変わらずだし、かと言ってこのままの状態でいるのも耐えられない
まぁぶっちゃけてしまうと「早く帰りたいいや違うここから逃げ出したい」が今一番の心境
離れたくないとか思っていた数分前の僕さようなら
とりあえず様子だけでも伺おうと思い、そっと首だけ動かして臨也さんの方を見て、そして
僕は、眼を瞠った
「……臨也さん」
「……なに」
「顔、真っ赤ですよ」
「黙ってお願いだから……帝人君の馬鹿、馬鹿、反則」
耳まで顔を赤く染めたその新宿の情報屋は、僕を抱きしめる力を強くする
きついきつい、けどより一層臨也さんと近付いて、なんだか心臓の音が重なるようで
臨也さんも僕も、鼓動が速い
いつもの臨也さんからは想像できないその表情や仕草に、僕は嬉しさでいっぱいになってぎゅっと臨也さんを抱きしめ返した
でもその日の夜、“お礼”と言う名の“お返し”として、明け方まで散々に臨也さんに弄られたのは別の話
(すき?きらい?どちらもはずれ!)(こたえはだいすき!)