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紅葉

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静かな昼下がり。









秋の柔らかな日射しが差し込んで来る。












「ん~、いい天気」









少し小さく伸びをした千鶴は庭を見た。










紅く色ずく葉が舞い振る。









こんな日はのんびりと散歩でもしたい気分だ。












以前ならそれが直ぐにでも実行出来た。










だが、今は自分の意志で外へ出る事は叶わない。









「・・・」









でも、千鶴は今の状況に何か不満が在る訳ではなかった。









新撰組の人達はとても優しく接してくれる。食事も一緒に取り、巡察も一緒に連れて行ってくれる。










千鶴を仲間として扱ってくれているのは、凄く嬉しい。











だがどうしても胸のもやもやが晴れない。











千鶴は庭へと出て、しゃがみ込み一枚紅葉の葉を拾い上げ陽に翳してみた。














「眩しい」







「お前は、一体何してんだ」








千鶴が眩しさに眼を瞑った瞬間、後ろから呆れた様な声が聞こえる。











「土方さんっ、きゃ!」











千鶴は土方が居た事に驚き体勢を崩してしまい、そのまま尻餅を付いた。












「痛ったい・・・」









尻餅を付いた場所を摩る千鶴を見て、思わず土方は笑った。










「あっ、土方さん今笑いましたね!」









千鶴は少し頬を恥ずかしさで染めながらも抗議の言葉を発する。











「笑ってねえよ」








「笑いました」








「笑ってねえって云ってるだろうが」








千鶴はじっと土方は見遣る。その瞳は不満に満ちている。











「で、こんな所でお前は何してんだよ」









土方は上手く逃げた。







千鶴はそれに対して口を開こうとしたが、止めた。









ひょいっと、立ち上がりきょろきょろと回りを見渡し、「あ、」と声を上げ何かを拾い上げる。










千鶴はそのまま土方の方へと駆け寄って行った。









「これ、です」










「紅葉、か」











「はい。とっても綺麗だったので拾ってみたんです」







千鶴の手の平から土方は紅葉の葉をとった。










「秋と云えば紅葉だな」





「はい、後読み物や芸術の秋です」




くすっと千鶴は笑い、空を見上げた。





釣られる様に、土方も空を仰ぐ。










紅葉の木々の間に広がる青空、鱗雲が見えている。












その時間は永遠の様に長くも一瞬の様に短くも感じた。

















「千鶴」






土方は千鶴に向き合うとそっと頬に触れた。







「土方、さん?」








「お前は、」







ぐうぅぅー








「・・・・・・・・」







土方が言葉を云いかけた時、何か間の抜けた音が響いた。










「す、すすいませんっ!!」















千鶴は顔を真っ赤にしながら必死に謝る。













「そ、その・・・」








「食欲の秋だからな」








土方は意地悪く笑みを浮かべ、千鶴のお腹を見た。








「うぅ・・・」







恥ずかしくて千鶴は俯いた。








「千鶴、行くぞ」








「え、」








「墨が切れてたのを思い出してな。その序でに甘味処に寄ってやるから付いて来い」









「そんな、だめですよ。申訳ないです」








無論墨を買いに行くなど只の口実。








「序でだって云ってるだろうが。ほら、行くぞ」










照れを誤摩化すかの様に土方は乱暴に千鶴に手を差し出す。









千鶴は一瞬躊躇うが土方の手にそっと手を重ねた。










「さっさと行くぞ。他の奴らに見つかったら煩くてしかねえからな」


















歩きながら千鶴は「そう云えば」と口を開いた。










「先ほど云いかけた事って何だったんですか?」









「・・・何でもねえよ」









「え、でも。気になります」








「気にするな、忘れろ」









「で、も・・・」







「さっさと歩け」







土方は結局何も千鶴に教え得る事は無かった。

















ある秋の昼下がり。







穏やかな刻が流れていく。







手を繋いで歩く二人の姿はまるで初々しい恋人同士の様だった。






































『お前は、本当なら此処にいるべきじゃねえのにな』
















『だが、千鶴と出逢った事は・・・運命なのかもしれねえな』
























千鶴はその後甘味処で食べ過ぎて、お腹を壊したして帰って来た。








無論土方の顔は呆れ返っていたのは云うまでもない。








でも、それはまた別の話し。



















              おしまい


















作品名:紅葉 作家名:桜月