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半熟の黄身と籠もる

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不穏な出会いから暫らく経って、後輩の意外と噛み合わない点に気が付いた。甘味より塩辛い味を好む、手先は不器用、ミニスカートの裾を気にしない、所作が粗暴、加えてその他幾つもの所行などなど。外身は異常な程にこれでもかと威嚇のように固めてくるのに、これでは危なかしくて目を離せない。

お姉様、本当は男に生まれたかったんですよ。でもですね、両親は違ったらしくて、それはもうちやほやして貰いました。

だからといって矛盾を押し通しては無理を重ねていくなど大変だろうに、肩の荷を軽くして生きてゆけばいいのに。または自分のように海月みたいな世の渡り方をすれば、漂いながらもお気楽に過ごせるのに。


凜とした立ち振舞いに淡く憧れを抱いている園原さんから、絡まれている此方を眺めては仲が良いですねと言われるのは何だか釈然としない。それはともかく、暖かく眼鏡越しに目尻を下げる処は可愛らしいと思う。自分はそんな風に穏やかに微笑みを浮かべられないから。
日和者らしく訳を知らないふりをする。だが偶には真面目になってあげようかと奮起する。我ながら緩急がまちまちである。



授業と授業の合間に教科書を借りに来た正臣と、偶然移動教室で通るので寄った後輩が鉢合わせした。実は新鮮な組み合わせである。
「お、噂の後輩か」
「正臣、噂って?」
まあ気にすんねーと軽く流す長馴染み。ただし笑顔の面を被った後輩を眺める目は剣呑なものを宿している。
「帝人にくっついてるらしいけど、どういうつもりだ?確かチームに入ってたよな。帝人は興味のある処しか知ろうとしないけど、情報の精度は細かいし」
何、企んでる?そう言った、圧力を込めた声は低くなった。
どうやら相性は今一つ。そういえば顔を合わせたことがなかったけれど、これが初めての顔合わせなんてもしかしたら互いに避けていたのかもしれない。大体会わなかった方が不自然であるのだし。
少し前のトラウマに正臣は敏感になっている。心配は嬉しい。でもね正臣、互いに背負ったものを知り合っても雰囲気は変わらなかったこの後輩を一応、気に入り掛けている自分が居るんだけど。いつ頃伝えようかな。
「企むも何もありませんよ、お姉さまに危害を加える訳ありません」
それに、と後輩は熱を帯びた声で言う。
「同性の自分の方が、余程お姉さまを理解出来ます。いいところもきっと余さずに分かります」
「距離が近過ぎて近視なんだな、俺と帝人の付き合いの長さなめるなよ」
偶にある両人お揃いの暴走の兆しを感じるので、そろそろストップを掛けることにする。
「青葉くん、ボールペンの次はホッチキスだからね。それと正臣、いじけてないで。ちょっとかっこわるい」
気性や身体的には敵わないのに、まだ冷たい声と眼差しは効果を発揮してくれるようで助かる。両成敗して、顔色を寒色系にした二人を見て思う。




単調で慣れ飽きてきた日課をぼやきながらも反映するべく、思考回路を現状に合わせるように、同じく感情も筋が通るようまたは納得出来るようにと組み換えて更新すれば。こんがらがって絡まり切った、解くのが困難な固結びの思考は、一度方向性を決めたならばその一直線な解析を止めない。
蓼食いのように自分などに執着してみせる相手からもたらされる脊髄での反応や、可愛さを自己演出しようとして可愛くしてる処よりその可愛くあろうとしている処が、ふてぶてしくも何処かしらかわいいとは思う。好ましいものになりつつあると感じる。もの申せなくなり、最後に何故か愛おしくなってしまう感覚がする。
だからさ、どうこうする必要性なんて少しもないよね。
何だかんだしつつ、嗚呼なんて、いたせりつくせり。夢なら醒めないでいて、溺れて水底で青く染まってしまえれば。

肩甲骨には羽があったのではなくて、その間には背鰭が生えていたのかもしれない。
重なる思考にお互い気付かないまま、歓喜の青に浸水されてゆく。
作品名:半熟の黄身と籠もる 作家名:じゃく