いつか、きっと、未来には
全力疾走、喧嘩上等。
オレはいつだって前を向く。
何時だって笑ってやる。
顔だけで笑ってるんじゃなくて全身で。オレの身体の中までも。血管の中さえ沸騰して。
笑いながら、手を伸ばして。
噛みつくみたいなキスをして。
そのままベッドに押し倒して。
部屋ん中、明かりなんかなくて真っ暗で。窓の外には星の明かりがあるけどさ。顔なんて、こんだけ近寄らないと見えなくて。
でも、近寄れば見えるだろう?だから。
引き寄せて抱きついてキスをして。瞳なんか閉じないで強く睨みつけるように。
そしたらアンタもオレを見て、そんで馬鹿みたいに笑ってさ。
だって、見える。
暗闇じゃない。
アンタの瞳の中にはさ、ちゃんとオレが映ってて。
それからオレをじっと見て。
見えて、いるんだ。本当に。
ほんのちょっと前までは、アンタはオレが見えなくて。視力なんかが奪われてて。
ほんのちょっと前までは、手探りで全部進めてた。
でも今は。
見える。映る。オレがわかる。
漆黒の、夜なんかより深い瞳。そこにある焔の意志。
なあ、取り戻したんだぜ。オレ達は。
真理にだって神にだって、いくらだって喧嘩売る。
奪われたものは取り返す。
絶望になんて大人しく浸ってなんかやるもんかって、全力かけて殴り込んで。
その結果のこの未だ。
なあ、笑うのも当然だろ?
嬉しくて。
気が狂ったみたいに笑ったっていいだろう?
噛みつくみたいにキスしながら。服なんか脱ぐ手間すらも惜しくてさ。
だからそのまま本能のまま抱きついて。
しがみ付いて離さない。
きっと麻痺、してるんだ。
脳内物質とか出てるかも。
馬鹿みたいに笑ってさ。欲望のままに手を伸ばして、抱き寄せて抱きしめて抱き返されて。
身体の中でアンタを感じて。一番深いところでアンタの熱に揺さぶられて。
手加減なんてしなくていいから。
背中痺れて、なんか怖いものが押し寄せてくるみたいに窒息する感じとか。
意識なんてないくらい遠くに吹き飛ばされる感覚とか。
なあ、アンタのその漆黒の、その瞳に映るオレが居る。
それだけを感じさせて。
取り戻したアンタの目に、笑うオレを映してくれ。
……いつか、きっと。
そんな未来を手にするから。
だから、今は。今だけは。
なあ、少しだけ泣いていい?
すぐに立ち向かって取り戻すから。
真理のヤロウに喧嘩売って、絶対に勝ってみせる。
アンタの光を取り戻すから。
だからなあ、一瞬だけ。ほんの少しの間だから。
オレを映さない灰色の瞳。
それを少しの間だけ、アンタの代わりに泣かせてくれ。
‐終‐
作品名:いつか、きっと、未来には 作家名:ノリヲ