恋の闇
最近土方と出掛ける機会が増えた。
それは嬉しい事だけど、何処か素直に喜べない自分がいる。
土方と千鶴は町の商店へと買い出しに来ていた。
「あら、妹さん?可愛らしいわね」
「兄妹仲良くて羨ましいね」
土方と二人でいると、必ずそんな言葉が聞こえて来る。
千鶴は理解はしていたが、改めてそう云われると落込んでしまう。
自分と土方は兄妹と思われる程歳が離れている。
土方が時々『餓鬼』と云うが、本当にそうなんだと思い知らされてしまう。
「土方さん」
二人で歩いていると後ろから声が聞こえ、土方は立ち止まった。
「こんにちわ」
声の主は土方より少し上位の歳の女だった。
色鮮やかな着物を身に纏、艶やかな香りが漂う。
『綺麗な女性(ひと)ー』
整った顔立ちで素直に綺麗だと思う。
「少し此処で待ってろ」
土方は千鶴にそう云うと彼女の元へと行ってしまった。
千鶴は云われるままにその場で土方を待つ。
遠目で土方と彼女が話している様子を伺う。
まるで、恋人同士に見える。
お似合いなのかもしれない。
美男美女。
綺麗で、色気だってある大人な女性。
『それに比べて、私は、、、』
「悪い、待たせたな」
「・・・」
「千鶴?」
「どうした、何処か具合でも悪いのか?」
黙り込む千鶴に、土方は不信に思い顔を覗き込む。
「え、」
「どうした」
「いえ、何でもないです」
そのまま、また二人並んで歩いて行く。
その後、買い物を済ませ土方と千鶴は屯所に戻った。
千鶴はその日の夕刻、気分が優れないと云い自分の部屋に篭ってしまった。