二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

RM4「Lying on the ground.」サンプル文

INDEX|1ページ/1ページ|

 



部屋の前に椅子を持ち出して座っているロマーリオ達は雲雀を見て立ち上がり、無言で扉を開いた。
「ディ」
ディーノの傍らに立った雲雀は自分を見上げる不安げな眸に苛立ちを覚えた。
姿はディーノそのものなのに、よくわからないものに乗っ取られたようだ。
「キョーヤ?」
電話で聞いたより幼い声。
「今、一体いくつなの?…年」
「…12」
「なんで僕を呼んだ?」
「…わからない」
ふるふるとかぶりをふる仕草は子供そのもので、雲雀はつい手が出た。
ディーノの胸ぐらを掴み上げて正面から顔を見る。
怒りを湛える雲雀にびくつかれたら投げ捨ててやる、と思ったが最初こそ抵抗したディーノが、目をまん丸くして純粋に驚きを顕した。
「キョーヤは強いね。オレに触れてもなんともないんだね」
「僕をそこらへんの人間と一緒にしないでもらおうか?」
言いながらも、クラッと世界が廻った。
強い吸引力が雲雀の体をディーノへと吸い込むような奇妙な感覚のズレを強く感じた。
遅れて悪寒に襲われる。
上下左右の感覚が強制的にシェイクされて足下に穴が空いた。高速のエレベーターが一気に降りるときに感じる、腹の底が浮く感じ、だが逆に上昇する知覚もあって、自然吐き気が込み上げる。
体中の毛穴が開いたような暑さと、冷水をかけられたように歯の根が合わないぐらいの冷たさも感じる。
強制的に意識を捻れさせられるこの感覚は性悪な霧のリングに他ならなかった。
自分という存在が力業ではネジ伏されそうだと雲雀ですら思った。
意識を離せ、と囁かれたような気がした。
一瞬、瞬間、魅惑的な香りとここちよい感覚に包まれる。暖かくてほのぐらい心地よい場所。
本能的に雲雀が己の唇を咬みきったと同時に、腹を蹴飛ばされた。
今まで包まれた感覚が嘘だったように、目眩と悪寒がまさに霧のように消えた。
仰向けに倒れながら脂汗と眥(まなじり)に浮かぶ涙を拭う。
雲雀ともあろうものが呼吸が整わず、荒く胸が上下する。
「ごめん!まだこの体使い慣れていなくって!」
受け身も取れず背中から吹っ飛ばされた雲雀に慌ててディーノが駆け寄った。
それでも、両膝をついて触らないように雲雀を覗き込む表情はディーノであってディーノでは無かった。
雲雀が知るディーノはこんな純粋に雲雀を心配する顔は見せなかった。
――いや、遠い昔、出会った頃は自分で吹き飛ばしておいて飛んできてはこんな顔をしていた。
もう十年たってしまったけれど。
あの頃は実力差に歯痒く思ったけれど、追いついたと思ったときは彼自身が随分遠くに行ってしまった。
「ホントに僕のことを覚えていないの?」
白にすら見える金髪の先を引っ張る。泣きそうに鼻の頭を顰めて、極力雲雀に触れないように堪えている。
「キョーヤって口が覚えてる」
「他には?」
おもしろがってディーノの毛先を弄ると、擽ったそうに身を捩ってディーノが離れた。
バスルームからハンドタオルを持ってきて、口元に落とした。
「血が出てる」
身を起こして、よつんばいのディーノと向かい合う。
「どうしてそんなみっともないことになってるの?ディーノ」
――仕方ないだろう。
脳裏に浮かぶのは、口端を歪めて僅かに諦めた感の漂うディーノの笑みだった。

雲雀は財団を作って、世界中のリングの調査に乗り出した。
大空、嵐、雨、雲、晴、雷、霧の七種類の波動に対応するリングと匣があるが、ボンゴレリングのように七種類のシリーズとして揃っていることは希(まれ)で、通常はどれか一種類で存在することが多いことがわかった。中にはいくつか対や、石の純度の違いかコンボでの使用が可能なリングもあった。
そんな中、面白がったディーノがキャバッローネ収蔵のリングを雲雀で試したことがあった。雲雀が興味を示したのは、彼が嵌められなかったリングだった。それは、深紅に染められたシルクの上で輝く華奢なものでどこにでもあるものに見えた。
『これは親父達の結婚指輪。ちゃんと大空のリングだった。でも、二人で装着しないと本当の機能は現れないんだって』
『どんな機能があるの?』
『さぁ聞く前に亡くなったから、わかんないや』
『試してみないの?』
『それを聞くか』
ディーノはリングボックスの蓋を閉じて、口端を歪めてそう笑っていた。

なんでディーノがそんな笑い方をしたのか、何故、今頃自分はそれを思い出したのか、エクスクラメーションマークが浮かんだ雲雀は我に返った。
目の焦点が合う雲雀を覗き込んでいたディーノがくちづけていた。ディーノも我に返ってすぐ、身を翻して隣の部屋に駆け込んだ。
性悪なリングはディーノを介して雲雀の心に忍び寄ったらしい。
身を起こした雲雀は頭を振って、その感覚を追う。
今の回想で重要なパートはどこだったか。
リングの種類、精製度、匣、キャバッローネの先代のリング。
不意に胸元の携帯が鳴る。
夕方出会ったリングの持ち主からだった。