【ノマカプAPH】ずっと…【中←越】
彼と出会ったのは遥か昔の話。
まだ幼かった私は、彼を兄のように慕っていた。
だけど、いつからかその感情は違うものとなっていた。
彼が私の家へ来ると聞けば普段よりも見た目に気を使い、彼が帰ってしまえば次にいつ彼が来るのだろうということばかり考えた。
あれは、きっと恋だったのだろう。
しかし、時が経つにつれ私と彼との距離は広がり、今では用事がなければ会話することもなくなってしまった。
そして私が初めて抱いた恋心は、ゆっくり色褪せて心の奥へと消えていった。
……はずだった。
「で、何の用よ?」
「久しぶりあるな、元気だったあるか?」
「えぇ、お陰さまで。」
彼と一対一で会話をするのはいつ以来だろうか。
会議などの場で仕事上の会話はすれど、プライベートで、ましてやわざわざ機会を設けて彼と向き合うなどということはもうずっとしていなかった。
「忙しいのに呼び出して悪かったある。」
「いえ、大丈夫よ。」
「回りくどいのは面倒あるから、単刀直入に言うある。我と仲直りするよろし。」
「は?」
「何が原因だったか覚えてないが、もうそろそろ仲直りするある。」
彼が言っていることについて理解が出来なくて、パチパチとまばたきを繰り返す。
「別に結婚しろだとか言ってる訳じゃないあるよ?」
「分かってるわよ…だけど…」
「別に深い意味はないある。昔のことちょっとだけ思い出してたら、また越と色んな話したくなったある。」
彼からはたくさんの話を聞いた。
武勇伝がほとんどだったが、時には下らない話や、知り合いの恋の話なんてのもあった。
一方、私から何かを話すことは稀だった。
「今度は越の話を聞きたいある。でも、我もお前に話したいことたくさんあるから長話はダメあるよ!」
まだ私から何も返答を得られていないというのに勝手に話をすすめる彼に対して反抗心を抱いたが、私の首は勝手に縦に一回動いていた。
それを見た彼は、満足げに笑い「それでいいある」と呟いた。
そしてダボダボの裾から手を出して、私の頭を撫でた。
近頃そんなことをされたことはなく、思わずその手を払いのける。
その時昔仕舞い込んだ気持ちがかすかに疼いたのには、気付かないふりをした。
【終】
にーに誕生日と聞いて。
誕生日要素皆無ですがwww
タイトルは確かに恋だった(http://85.xmbs.jp/utis/)からお借りしました。
作品名:【ノマカプAPH】ずっと…【中←越】 作家名:千草