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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記5

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時間は少し遡り、ちょうどケロたん(笑)が暴走していた頃。ここは妖怪の山の奥の奥、天狗の本拠地である隠れ里では、やはりちょっとした騒ぎになっていた。しかし、頭領である天魔と、その側近はいたって平静だった。玉座の間というほど豪奢ではないが、広くそれなりに装飾も施されている部屋の、ちょうど中央にある椅子に、とても長く、絹のようになめらかそうな黒髪と、男性も女性も虜にするような、凛々しさと優しさを併せ持った顔をした美しい人物が座っている。おそらく、この人物こそが天狗の頭領『天魔』であろう。
「今の御山の揺れ、どう思う?」
「たぶん、神様のどちらかが力を使ったんじゃない?」
この側近らしき人物、なんと天魔に対してタメ口である。そうとう親しい間柄なのだろうか。
「えぇ、おそらくそうでしょうね。ここ最近こんなことは一度もなかったのに、どうしたのかしら?」
つい最近の騒ぎといえば、例の間欠泉事件が上がる。しかしその事件について天魔は、博麗の巫女と親しい鴉天狗『射命丸 文(しゃめいまる あや)』を巫女に同行させて(実際は現地には行っていないが)、結局は神様達のおちゃめな行動ということで例によって解決したという報告は受けている。
「どうする?狗賓衆(ぐひんしゅう)に調べに行かせる?」
狗賓衆とは天狗の地位としては一番下で、扱いとしては使いっぱしりに近いが、実質天狗社会における実動部隊で、人間と密接な関係にあり、信仰の対象でもあった。
「いいえ、今回は狗賓衆を出すのはやめておきましょう」
「どうして?」
「なんとなく・・・今回はむこうから直接訪ねてくるんじゃないか・・・そう思うのよ」
天魔のこの勘は正しい。もしこれで使いを送っても、使いが守屋神社についた頃には誰も出てこないだろう。
「そういえば、狗賓衆で思い出したわ」
そう言うと側近らしき人物は天魔の顔を覗き込んで言った。
「狗賓衆の筆頭に、椛(もみじ)をつけたのは、いくらなんでも早すぎると思う」
「あら?あの天下に名を轟かせる剣聖、鞍馬天狗の言葉とは思えないわね、美理。あの子はあなたの一番弟子なのよ。弟子入りを求めた天狗たちをことごとく追っ払っていたあの美理が、唯一弟子入りを認めた子。それだけでもうお墨付きじゃない」
本来狗賓衆の筆頭につく天狗は、最低でも500年以上生きた天狗が選ばれるのが通例だった。だが、初代天魔が亡くなり、御影が二代目天魔になった時、まだ200年と少ししか生きていない『犬走 椛(いぬばしり もみじ)』を大抜擢したのである。これは天狗社会においても異例中の異例だった。因みに御影の命で間欠泉事件の真相を調査した射命丸は椛の直属の上司なのだが、なんと1000年近く生きている。当然それでも御影や美理よりも年下だが。
「確かにあの子は才能、資質共に十分だし、鍛錬を怠らない強い精神も持ってる。けれど、圧倒的に経験不足よ。この先あの子が対応しきれない大きなことがあってからでは遅いわ」 
美理は椛のことを本当に大切に思っているのだろう。かなり必死に訴えている。しかし御影は涼しい顔で返す。
「そんな大きなことが起こったら、私達や大天狗たちが出ればいいだけの話よ。それに、経験が足りないからこそ、私はあの子を筆頭につけた。そうすることで、否が応でも沢山のことを経験することになるし、責任感も使命感もつくでしょう。可愛い子には旅をさせよっていうし、少しはあなたの自慢の一番弟子のことを信じてやりなさいよ」
ここまで言われてしまっては、もう美理に返す言葉は無かった。美理としても椛の実力は十分認めているし、もっと強く逞しくなってほしい。それに、御影の言ったとおり、いざとなれば自分が助けてやればいいことだ。
「さて・・・それにしても、今回あの神様達はいったい何をやらかしたのかしらね」
「そうね・・・今回もこのあいだの間欠泉騒ぎ程度で済めばいいけど」
安心しな。今回に限っては全く平和なものだよ。むしろ、大事件の火種は天狗たちの中にあるかも・・・まだここでは語らないけれどね。
 
 ところで、こんな肝心な時に、幻想郷最速の烏天狗、射命丸は何処にいたかというと・・・なんと人間の里で新聞記者として取材をしていた。
「何か、最近面白いことってありましたか?」
ここは人間の里に唯一ある、子供たちに勉強を教える場所、寺子屋である。幻想郷の人里に学校は存在しない。今射命丸が取材している人物は、本日の全授業を終えたばかりの先生。しっかりものであることが見て取れる凛々しさを湛えた美しい女性、『上白沢 慧音(かみしらさわ けいね・ 実は半人半獣)』である。慧音は少々呆れた様子でため息をついた。
「おまえ、聞く相手を間違えてないか?」
慧音の指摘には全く耳を貸さず、文は取材を続ける。
「ほら、最近どっかの歴史をパクッといっちゃったとか」
「いや・・・だからな?」
人間の里で暮らし、様々な人と交流を持つ慧音は、こういう手合はどうあしらっても大抵のことでは引き下がらないことを知っている。どうしたらこの状況をできるだけ早く切り抜けられるか。仕事が終わったばかりの疲れた状態ではあまり良い案は浮かばない。
「あっ!!妖怪だっ!!」
「すげぇぞっ、背中に羽が生えてるっ!!」
「鴉天狗様だ!!」
授業が終わってもまだ残っていた子供たちが射命丸に気付き、わらわらと群がり始めた。
「ちょっ、こらっ、服を引っ張るんじゃありません!!って、痛たたたっ!!羽はだめっ、もげるもげるっ!!」
・・・これでも1000年クラスの妖怪である。
「もお~!!いいかげんにしないと、君たちのお父さんお母さんに、君たちがやった数々の悪行を書いた新聞を配っちゃいますよっ!!」
子供たちと同レベルである。
「や~い、鴉が怒った~」
「鴉じゃないっ!!鴉天狗だー!!」
「・・・・はぁぁ~~~・・・・」
慧音の大きなため息は射命丸と子供たちの声の中に消えた。 

あぁそうそう、大事なことを言い忘れてたね。幻想郷は今一月の半ば、冬の真っただ中だ。今年の冬は雪が少ないみたいだけど。秋姉妹は隠れ家でまったりしながら次の秋を待ち、冬の妖怪達は、冬だけれどもわが世の春を謳歌してるよ。でも、今年の冬はなんだか熱くなりそうだね。