音無&岩沢
午後7時過ぎ、バイト帰りの音無は路上ライブに見入っていた。
楽しそうに歌う少女に音無はつい足を止め、見入っていた。
音無はあの少女にどこかで会ったことがある気がしていた。
よくは思い出せない、でも少女の歌う歌にも聴き覚えがあったため、音無は気になり少女に声をかけた。
「なぁ、俺達どこかで会ったことないか?」
音無はこの台詞のあと気付いた。
(やっべ、ナンパみたいな台詞じゃないか・・・)
「んっ、ナンパか?」
少女を特に気にした様子も無く、微かに笑い聴き返す。
「あっ、悪い、そんなつもりは無かったんだ。」
「気にしなくていいよ、でも・・・」
少女にも、音無と同じ様な気持ちがあった。
少女も音無とどこかで会った様な気がしたのだ。
「でも?」
「私もアンタに会ったことがある様な気がするんだ。」
二人はあの世界で関わりがあっただけで、この世界では初対面のはず・・・
だが二人には会ったことがある気がするという共通点がある。
記憶は無くとも、心に刻まれているのだろう。
「そういえば、まだ自己紹介をしてないな、俺は音無結弦。」
「私は岩沢まさみ、よろしく。」
二人は色々な話をした、音無の妹の初音のこと、岩沢の家庭環境について、二人は小一時間ほど話し込んだ。
「もうこんな時間か、音無は時間大丈夫なの?」
時刻は8時、いつもなら初音の病室にいる時間帯だ。
「いや、そろそろ初音の見舞いに行かなくちゃいけないから。」
「そう、ならメアド交換しない?」
「んっ?あぁ、構わないぞ。」
音無と岩沢はメアドを交換し、その日は別れた。
それから音無と岩沢は頻繁にメールし、一緒に遊びに行ったりして徐々に仲良くなっていった。
音無と岩沢はメールをしたり、一緒に遊びに行ったりすることでお互い惹かれあっていった。
そしてある日のこと、岩沢が学園祭で演奏することが決まり、学園祭に来ない?と岩沢に誘われた音無は体の調子が良くなった初音と学園祭へ行くことにした。
学園祭当日、岩沢の出番が終わり一緒に学園祭を回ることにした。
「私の歌、どうだった?」
「最高だったよ、全校生徒が熱くなってたぐらいだしな!」
「ありがとう。」
「と、ところで音無は学園祭の後用事とかある?」
「いや、別に無いけど」
「じゃ、学園祭が終わった後に校舎裏にある一番大きい木の下に来て。」
「分かった。」
学園祭が終わり、初音を病院へ送った後、音無は指示のあった木の下に来ていた。
しばらく待つと岩沢が来た。
「待った?」
「少しだけ。」
岩沢は深呼吸をし、自分を落ちつけた。
「あのさ、音無に話があるんだ。」
「どうしたんだ?改まって。」
「私、音無の事が好きなんだ、だから私と付き合って欲しい。友達としてじゃなく1人の女として。」
岩沢は一字一句強く、強く、音無にきちんと伝わるように自分の気持ちを伝えた。
しばらくの沈黙・・・
そして、音無は・・・
「あぁ、俺も岩沢が好きだ!」
「嘘じゃない?」
「あぁ、岩さ、じゃない、まさみ、愛してる。ずっと一緒にいよう。」
「嘘じゃないって証拠あるの?」
「我儘な奴だな、これで信じてくれるか?」
音無は岩沢の唇に自分の唇を押しあてた、そしてお互いがお互いを感じれるように何度も熱い口づけを交わした。
これからも二人の物語は続く、どこまでも。