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ありえねぇ !! 4話目 前編

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どんな少年だったのか知りてぇ!!


「ああ、でもよ~、……ミカドちゃん、頑張ってくれちゃってる所、水をさすようで悪いけどさ……、銀行のホストサーバーへのハッキング行為って、……バレたら俺がお縄かな?……やっぱ?」

静雄もしばし考え込み、やがて溜息を一つ零す。

「幽霊の仕業っつって、信じてくれる奴がいると思いますか?」
「あ、やっぱり?」


潮時だな。


静雄はポケットに突っ込んでいた黒手袋を両手に嵌めると、夢中になって作業に没頭している生首につかつか近寄り、頭を片手でがっきりひっ掴んで、引っ張り上げる。

《ふえ!! な、何? 何!!》
「俺、今お前の将来、マジで心配になったぜ」
《……あ、静雄さんだぁ♪ お帰りなさい♪♪……》

真っ黒い影でできた数本の足が、一瞬で霧散した。
静雄の手の中で、嬉しげにぴょこぴょこ跳ねる首に向って、彼もにぃっ♪と、悪餓鬼のような笑みを浮かべる。

「竜ヶ峰」
《はい?》
「お前さぁ、高校一年生の分際で、アンダーグランドに首突っ込みすぎだ」
《ほよ?》
「……それに……」

そのまま指に軽く力を入れる。
プロレス技で言う、アイアンクローだ。


「トムさんにあんま迷惑かけてんじゃねー!!」

《ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!! 静雄さん、ギブギブギブ!!》
「やめてやれ静雄、ミカドちゃんが潰れるだろが」

静雄的には軽いお仕置きのつもりだったのに、最早幽霊とは思えない妖怪になっても、自分の怪力は堪えるらしい。

「でもな静雄、確かにハッキングしまくりはやりすぎちまったと思うけどさ、ミカドちゃんが今日ネットで頑張ってくれたお陰で、俺達の仕事はさ、当分どえらい楽になったべ?」

そりゃプリンターが次々と吐き出している印刷物を見れば判る。
現在、回収客が何の職についているかがしっかり判れば、取立て業は更に楽になる。
真っ当な企業に勤務なら、テレクラでこさえた未払い金の事をバレたくないだろう。

なら、回収前に先手を打って『人事課に今までの経緯を送るぞ』と脅す事もできるし、それでも無視なら直で資料を持って総務課に赴いたり、簡易裁判を匂わせて、勤務会社の協力を得られれば、相手の給料を差し押さえる事も簡単だ。

そんな電話作業で振り込んでくれそうな客一覧表まで出来上がっているのだ。
トムがその用紙を一枚、ぴらぴらと振りながらにこやかに笑う。

「俺はこのまま今日は、ミカドちゃんが印刷してくれたもんの整理と、電話かけまくり業務に徹するからさ。静雄は俺の用心棒が仕事だし、っつー訳で、今日はもう病院へ行った行った♪ 社長には俺から言っておくからよ♪」
《はい、ありがとうございます♪♪》
「……ありがとうっす……」

複雑な気持ちだったが、帝人の体がヤバイのは本当だし、上司の好意に甘える事にした。
帝人の首を抱え、急いで新羅の後を追う。




余談だが、この時の静雄が【トムさんにあんま迷惑かけてんじゃねー!!】と、アイアンクローを仕掛け、トムが【やめてやれ静雄、ミカドちゃんが潰れるだろが】と諫めていた会話は、いきなり怒鳴りだした静雄の剣幕に怯えた事務員の女の子達に、ばっちり聞き耳を立てられていた。

以降、トムは女子社員達に、パソコンに【ミカドちゃん】と名前をつけるキモい変人と誤解された。静雄に到っては、トロい動作を見せれば、パソコンですら怒りの対象になる、切れやすいにも程がある危険人物と、益々怯えられた。

また、話を聞いた男性社員達には、トムがパソコンに【ミカドちゃんの物凄いエロ画像を所持している】と思われ、それを初心な静雄が偶然見てしまい、仰天して壊されかけたという、とんでもなく不名誉な噂が蔓延し。

後日それを社長経由で聞いてしまったトムは、その場でへたり込んで「ありえねぇ」と頭を抱えたらしい。



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