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魔术熊猫

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暖炉の火がゆらゆらと揺れる空間に2人は居た。

流れるのは沈黙。

元より饒舌とは言い難い性格の2人
こうなることはいつもの事である。

そして香はそんな沈黙を心地良いものだと感じていた。

ぱちぱちと暖炉から聞こえる音以外には何も響かない。
そんな中で静かに隣り合わせて座っているとノルをとても近くに感じる。

至福。


しかしそれと同時にノルは気まずく感じてるのでは無いかという不安に包まれる。



「…香?」


無意識にノルの服の裾を握っていたらしい。
名前を呼ばれてその事に気付いた香はぱっとその手を放した。


「なした?」


顔を覗き込んできたノルに思わず目をそらしてしまう。


「顔…真っ赤だべ。なんかんげてた?」

「なんでも」

ノルの視線をかんじて顔をそらしながらそう言う。


「そへばこっちゃむがって言うべ」

顎を掴まれグイッと動かされるとノルと目が合った。
何を考えているのか、一切思考が読み取れないその双眸に見つめられて香はゴクッと生唾を飲んだ。


「ん?」

にやっと口角を上げたノルの指が香の喉元をなぞる。


「…っ」

「卑猥な事かんげてたべ?」

「…」

視線を泳がせる香にノルは溜息を零した。


ビクッと香の体が揺れる。


「香が話さねどわがんね」

「…笑ったら嫌っすよ」

「いいから言ってみれ」


表情こそ変わっていないがなんだか視線が優しくなった気がして、香は渋々口を開いた。

「ノルは俺と居ても楽しくないんじゃないかなって…思っただけっす」


…。

少しの沈黙ののち、くつくつと喉を鳴らす音が漏れた。


「笑わないでって言ったじゃないすか」


「かにな、おめ、めごいことかんげてんべな」


「…っ!」


羞恥心と勢いで腕を振り上げるも軽々と受け止められた。


「おっがねぇなぃ」


くすくすと笑みを零しながらそう言うノルの顔に思わず見惚れる。

中々笑わない彼の笑みは破壊力抜群だ。と常々香は思っていた。


薄くなっていた目が開いて青紫の瞳と目があった。
再度顎を掴まれる。


「香」

「ん…。」



香はそっと瞳を閉じる。

ゆっくりと重なる唇。
短いようで長い、長いようで短い不思議な感覚。

唇が離れたかと思うとおでこにもう一度口づける。


香が目を開けると笑みを浮かべたノルと目が合った。


「楽しくねぐでも香がおっだら幸せだで」


そういってぎゅっと手を握る。

顔を背けた香は耳まで真っ赤に染まっていた。
作品名:魔术熊猫 作家名:hyou