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出会いは必然・恋は盲目

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「一体君たちは何がしたいんでしょうね?この僕に手間をかけさせないで下さいよ。もうこの世界での害虫ですね。あ、むしろ死んだほうがこの世界のためなんじゃないですか?」

あははは、と朗らかな笑いをこぼしている少年は、その笑顔とは裏腹に地べたに這いつくばっている男子学生たちを足蹴にしていた。見るも無残とはまさにこのことだろう、と呆然と彼を見つめていた静雄は思う。
ほんの一瞬だった。自分でさえも分からないほどの早さ。
見た目、とてもなよなよしていて喧嘩など出来そうもない姿をしているのに。しかもあの暴言。丁寧な口調なのに辛辣すぎる。目の前の光景が信じられず、無意識に言葉が漏れた。

「ありえねぇ・・・」

時間は少しさかのぼる。今日も静雄は一人で下校をしていた。別に友達がいないわけではなく、大抵襲ってくる奴らが下校途中なので友人たちに怪我をさせたくないという心からだった。

(今日は幽が返ってくる日だ・・・。さすがに切り傷だらけっていうのは嫌だな)

最愛の弟が東京からわざわざ帰ってくる日に、擦り傷だらけの己を見せて心配させたくない。
静雄はため息をつきながら家路へと急ごうとしたその時、「てめぇっ!いいから金出せよ!」というなんともまぁ、ありきたりな言葉が聞こえてきた。
静雄はあーとか唸りながら頭をガシガシとかくと、怒鳴り声が聞こえてきた方向へ足を向ける。
案の定、そこにはカツアゲしている人間5人と見るからにひょろりとした学生がいた。しかもカツアゲされている少年は自分と同じ学園のものではないか。

(しょうがねぇなぁ・・・)

根が真面目な静雄はこのような状況を放っておけない。だからきゃんきゃん吠えている学生たちへ近寄って行ったのだが、なんだか普通のカツアゲとは雰囲気が違っていた。
そう、カツアゲされているはずの少年がまったく恐れた風貌をしていなかったのだ。
そしてだんだんと彼らの声が耳に入る。

「てめぇっ!さっきから何ケータイいじくってんだあ゛ぁ?」

「んだ、こっち無視してんじゃねぇよ!」

煩く吠えている男たちをしり目に、少年は携帯をいじるのをやめない。そんな少年にとうとう男たちは切れだしたようで、パシリと少年の携帯を叩き落とした。そして続けざまに少年の胸ぐらをつかみあげる。
静雄は慌てて、その少年を助けようとしたのだが。

「煩い」

彼の一言に全身がすくみ上った。静雄は駆け出していた足を止める。今の声はいったい誰が出した?
初めて感じる、恐怖というなの恐れ。
それは男たちも同様で、少年の胸ぐらをつかんでいる手がプルプルと震えだしている。
ほかの男たちは数歩後ろに後ずさって、少年から距離を取り出した。

「人がメールを打っているというのに、いったい何がしたんですか?お金がほしいなら自分で稼いだらどうです?人様のをすくねて恥ずかしくないんですか?あぁ、恥ずかしくないからやるんですね。失礼しました」

少年はつらつらと言葉を述べると、最後に苦しいので離してください、と付け加えた。
けれどそれで男が離すわけもなく、恐怖で顔をひきつらせたまま少年に殴りかかろうとしたのだ。
その瞬間、男のこぶしをその少年が受け止めた。静雄はあいた口がふさがらない。
先ほどの拳は遅いわけでは決してなかった。むしろ早いほうで。
殴りかかった男も口をパクパクと開閉しているだけで言葉を話せないようだった。

「いきなり人に殴りかかろうとするなんてどういう神経なんですか?」

笑顔で告げた言葉に秘められる冷酷さに静雄はただそこに突っ立ていることしかできなかった。
次の瞬間、男の絶叫が裏路地にこだまする。
そして冒頭へと戻るのだ。

「あぁ、もうおしまいですか?つまりませんねぇ」

少年はそう告げると、本当につまらなさそうに放り投げられた自分の携帯を取り上げた。
何度か操作をして動くかどうかを確認している。

「よし、動く。よかったですね?これで動かなかったら君たちから請求しようと思っていましたから」

にっこりとほほ笑まれたことにさえ、今の男たちは気が付かないだろう。何故ならもうすでに全員気絶しているのだから。

「さて・・・と。で、さっきからそこで見ている人。このことは他言無用でお願いしますね」

少年の言葉に静雄はびくりと肩をはねさせた。少年と目が合う。

「すみません。僕、あんまり目立ったことが好きではないので。お願いしますね『平和島静雄さん』」

にこりと鮮やかに、艶やかに笑ってその少年はそのままそこから姿を消した。
そのため、この大惨事も静雄がやったという噂が立つのだが、それはまた別のお話。
残された静雄はただ茫然と、消えた少年の背中を見つめ続けた。
そして顔を抑えながら、その場にしゃがみ込む。

「なんで俺の名前・・・・」

静雄はどうして自分の顔が熱を持ったように熱くなっているのか、わからないまましばらくの間そこでしゃがみこんでいた。