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山本とリボーンの本。 / サンプル

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 年に数回来伊する山本は、街でボンゴレが経営するホテルの一室に暮らしている。屋敷内に与えられた部屋では広すぎて落ち着かないというのだが、だからといってこちらが狭いかというとそうでもない。気分的な問題なのだろう。
 山本は部屋に入るなり、
「適当に座っててなー」
 と言って簡易キッチンでコーヒーを淹れ始め、リボーンはボルサリーノとジャケットを脱いでソファの背にそれらを掛けながら、久しぶりに来た部屋の中を見回した。
ベッドから真っ正面の位置にはテレビとミニコンポが置いてあり、その両脇にはCDとDVDのケースが絶妙なバランスで積み上げられている。その間に今リボーンが座ろうとしているソファセットがあるのだが、ローテーブルの端も要るのか要らないのか分からないような書類で丘ができていた。
「小僧―、ブラックでいいのか?」
「あればミルクも入れてくれ」
 その、上の数枚を摘まんで文面に目を走らせていると、テーブルの足元に置かれたビニール袋が目に入った。街で再会した時からずっと山本の左腕にかかっていて、雑貨屋の女房に女へのプレゼントかとからかわれていたものだ。中身は大きいものではないようだ。
 書類を戻すと、リボーンは指を伸ばして袋を覗き込んだ。青紫色の塊が見えた。
「悪ぃ、コーヒー牛乳になっちまったのなー …小僧?何してんだ?」
 二つのマグカップを手に戻ってきた山本は、ビニール袋を膝の上に乗せているリボーンを見て、あぁ、と口の中で言った。
「名前、ちゃんと聞かなかったから知らないんだけど、可愛いだろ?」
「買ったのか?」
「ん。お前の部屋に飾ろうと思って」
 カップをリボーンの前のテーブルへ置いたその手で、ベルベットのような青紫の花弁にそっと触れ、ふっと目を細めた。
「小僧の部屋って、いっつもきれいに片付いててスゲーって思うんだけど、ちょっと殺風景過ぎる気がしてさ」
 ボンゴレ本邸のリボーンの部屋は、普段から居住しているにも関わらず、時々エスプレッソの香りがする以外生活感のない場所である。
余計なものを何一つ持たないのは、リボーンという一人の人間の存在をいつでも丸ごと闇に消せるようにとのファミリーへの配慮なのだと、そのことに気付いたのはここ一、二年のことだった。
 何故そんな必要があるのか、それだけ彼の存在が重要であり危険であるということが、山本は言葉ではなんとなく分かっても理解はできなかった。それは山本の預かり知らぬリボーンの人生の中に刻み込まれたものの一つで、説明しろと言ったところで
「俺は超一流だからな」
 の一言で終わる他愛のないものなのだろう。

(寂しいじゃん、そういうの)

「これ、花が終わったら秋口くらいにまた咲くんだって」
「俺は面倒みねーぞ」
 手にしたカップに口を付けながら言ったリボーンの声に、山本はふっと目だけを彼に向けた。
「俺が見るのな」
「この種は難しいらしいぞ?お前には無理だろ」
「大丈夫だって。俺、こう見えて小学生の時アサガオとヘチマ育てて学校から賞状貰ってんだぜ」
 ぐいと胸を聳やかして言った山本を、横目でちらりと見てリボーンはプッと噴き出した。
 山本が言った植物のどちらも、リボーンは育てたことがなければ実際に見た覚えもなかった。が、賞状を貰ったと自慢するからにはそれなりの快挙なのだろう。今度日本に行った時にでも記録なりを見せてもらおうと思いつつ、
「そう言うならしょうがねぇ、置いていいぞ。ただし面倒は必ずお前が見ろよ?俺は水やりも草取りもしねーからな」
 その言葉が、こちらが思っていた以上に嬉しかったらしく、山本はパッと顔を輝かせて鉢を掲げると花に向かって言った。
「もちろん!よかったなお前!」
 その瞬間、リボーンの脳内で再生されたのは、日本の玄関先で子供が拾ってきた猫を親に見せながら
「この子、飼ってもいいでしょ?」
 とい上目使いに言う、古き良き昭和の風景であった。

(…その花は捨て猫で、俺は父親か?)

「よっし、じゃあこれ飲んだらツナんとこ行こうぜ。報告とかまだなんだろ?」
「あ?あぁ……忙しいな」
「こいつを早く飾ってみたいのな」
 どうやらまだ動きたくないらしいリボーンの額に、山本は鉢を片手に持ったまま、
「おかえり」
 とキスをした。
 できることなら、いつもそうしてやりたいと願いながら。

2009.05.17