綺麗な赤いいろ
尊敬。
俺が鬼道さんに抱いている感情は、確かに尊敬ではあるもののその一言では収まりきらない。
いや、収めさせてたまるものか。
溢れ出したそれが、艶やかな光沢を纏う深紅のベルベットとなっていつも俺を優しく包み込んでくれるのだが、
その優しい裏地には鋭利な刃物が仕込まれていて、俺の肉体を無慈悲に突き刺す。
衰えを知らない勢いで噴き出す鮮血は深紅のベルベットがすべて飲み込んでいった。
きっとあいつは、俺たちの血を栄養に生長する花みたいなモンなんだ。
その証拠に、深紅のバラも真っ青な顔をして逃げだすような突き刺すような真紅色をしてやがる。
最初は真っ白の花でも、色水を吸収すると花びらがその色に変化するっていうのを前に理科の授業で教わった。
だからきっと、あいつは食紅で色付けた色水なんかじゃなくておれたちの血を吸収したんだ。
だからあいつはあんなにも鮮やかな赤い色なんだ。
おれは生き血を吸って生長するなんてそんな花を、今まで見たことも聞いたこともなかったから、
きっと誰も知らない場所、たとえば雲の上にでも咲いていたんだと思う。
でも人間が雲の上に咲く花をつかもうとしたってむちゃくちゃな話だ。
だからおれがあれをつかもうとしたってそんなの無理で、りんごが木から落ちるのと同じように体が地面に落ちていく。
雲の上の花をつめるのはきっと空の上のかみさまだけなのだろうと、落ちながらかんがえていたら、
やっとおれの体が土にたたきつけられた。
さっきちょっとだけ見れた花は、すごくきれいだったなあっておもった。