トニーとギルバとシチュー
「お前、メシもう食った?」
「いや、食べてない。」
しらっと言ったギルバにトニーは目を輝かせた。
軽くでもいいので一飯預れないか、とダメ押しの
「俺は朝から食ってない・・腹へって。なあ一緒にメシを…」
そこまで言ってギルバは思い出したかのように言った。
「俺は…3日ほど摂っていないな。」
「!??!?それは食えよ!金ならあるだろ」
「さっきので最後だ」どうやら0ギルバらしい。
先ほどの目論みは泡になったむしろ三日も食べてないなどと
いっそ自分の腹のように心配になった
「しょうねえな…」
「トニーここは…?」
連れてこられたのは小さな部屋。簡易なベッドと雑多にいろいろな
ものが並んでいる。
「おれのねぐら。」
「!?」
「いっとくけど他人を入れたのははじめてだぜ」
この生業をしている限り、ねぐらなど自分のスペースを見せるような事は
しない。それが常識だ。勿論トニーはそれくらい分かっているだろう。
「どういうことだ。」
「はいはい、アンタはここで待ってなちょっと台所借りてくるから、何もないから出来るまで寝ててもいいぞ」
ぐいぐいと椅子がないので簡易なベッドに座らせるトニー
「…ああ」めしか・・
颯爽ととびだすトニー
ゆっくりギルバは背中をトニーのベッドに預けてみた。
(ダンテのにおいでいっぱいだ)
すう・・・
「おいおーい、アンタいくら俺の最高級のベッドがよすぎだからって爆睡しすぎだろ」
「!!!」
ガバ!
眠ることなど必要のない体がいつの間にか眠っていた。
どうしてだろうか。
「いいね、メシだぜ」
起きて目をしばたかせているギルバをみてトニーが笑い両手に持ったものを見せた
そろってない皿になみなみとシチューだ。
椅子の変わりに木箱を持ち出し、ダンテも座って食べだす
「食べろよ」
「…トニーが作ったのか?」
「ああ、ま・材料はニールからいただいたんだがな」
ニカリとトニーは笑った。
おそるおそる食べる初めてのシチューは
「・・うまい」
「だろ、俺の母親流なんだぜ」
「懐かしい味の気がする」
「あんたの母さんも作ってくれたのか」
(懐かしい味だ。)
何を想い、懐古の念に捉われたのか分からない、
ただ、”懐かしい”と思った。
作品名:トニーとギルバとシチュー 作家名:ユキヒメドリ