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トムさんとしずお【一緒にお風呂編】

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「静雄、もうちょいつめてくれ」
「トムさん、俺やっぱり無理だと」
「や、なんとかなるっ、て…くっ…わりぃ静雄、平気か?」
「はい、俺は全然平気っす」

一人でも足を折り曲げなければならない狭さの浴槽に、静雄とトムはふたり無理矢理体を沈めていた。





仕事が終わってふたりで帰宅途中、急な大雨に降られて、自分の家の方が近かったトムは静雄を家に引き入れた。夏の終わりの雨は思いの外冷たい雨で、体は芯まで冷え切っている。すぐに風呂に入りたかったが、一人が入っている間待っていると風邪をひくかもしれないと思ったトムは、無理矢理静雄と二人で湯船に入ることを決めたのだった。

「すんませんトムさん、俺別に待っててもよかったんすけど」
「いやいや、あのまま待ってたら風邪ひいちまうって」
「すんません、気遣ってもらって」
「いいっていいって、ちゃんとあったまれよ狭いけど」

この状態ではとても寛ぐことはできないが、体が温まっていくのは気持ちがよかった。仕事の疲れもあってトムは自然と目を閉じる。しばらくそのままほわほわと気持ちがいい空間に身を委ねていると、突然体がぐらぐらと揺さぶられた。地震でもきたのかとトムは慌てて頭を覚醒させる。

「トムさんトムさん!」
「うおっなんだ静雄かよ」
「風呂で寝たら危険ですよ、死ぬらしいです」
「ハア?この状態でどうやって溺死するんだよ、沈む余地がねえだろ」

必死な形相でまだ体を揺さぶってくる静雄に、トムは呆れながら言葉を返した。すると静雄は違いますよ、と首を振りさらに必死さを増した顔でトムの顔を見つめた。

「茹だって死ぬって親に教わったっす」
「…あ………そ………お前はずっとそのままでいてくれよな静雄」
「何すか?」
「いや、わかった、気をつけるな」
「うす」

予想外の静雄の発言に完全に目が覚めたトムは、うーんと両手を上にあげて伸びをした。その動きに少しでも邪魔にならないようにと、静雄が縮こまった体をさらに縮こまらせる。トムはお、わりぃと声をかけ何気なく視線を静雄に向けたのだが、思わず、そのまま静雄の体をまじまじと見つめてしまった。

「………………」
「何すか…?」

それに気付いた静雄が居心地悪そうに身動ぎをする。

「いや、なんつーか…お前っていい体してるよなあ」
「な、何すかやぶからぼうに!」
「まあ、やぶからスティックなのは認めるけどよイテテテテテ暴れるな静雄お湯勿体ねえ」

顔を赤くしてバシャバシャとお湯をこぼしながらわたわたし始めた静雄を、トムはなんとか落ち着かせる。

「変な意味じゃなくてよー、男して尊敬するっつーの?まさに理想の体型?とにかくうらやましいなと思ってよ」
「…そんなこと言われたの初めてですよ、照れます」
「…ソコも立派だしな」
「っトムさん!」
「だから褒め言葉だって、受け流せよ静雄イテテ悪かった」

顔を茹でタコのように赤くしてどうにか隠そうと再びわたわたし始めた静雄に褒め言葉だを繰り返しながら、トムは一旦浴槽を出た。静雄に背を向けて浴槽の縁に腰掛け、ほら見てない見てないとアピールすると、静雄はようやく大人しくなる。

「……………トムさんだって、立派な体してるじゃないですか」

はあ…とトムがこっそり溜め息をついていると、ようやく息を整えたらしい静雄がポツリと呟いた。

「…あ?ああそう、お世辞でも嬉しいぜ、ありがとな」

チラリと後ろを振り返って言葉を返すと、静雄はまだ顔を赤くしたままだった。かわいいとこあるなあと思わず笑いがこみ上げる。

「お世辞じゃないっすよ、本当にそう思います」
「そうか?なんか照れんなあ、最近ちょっと腹まわりアレなんだけどよ」
「いえぜんぜん、…もし俺が女だったら、ホント、抱かれたいっす」
「ぶっ…抱かれたいってお前」

何言ってんだ、とトムはケラケラ笑ったが、当の静雄は黙ったままだった。自分で言って照れているのだろうかと、からかうついでにトムは湯船に戻る。最初と同じように無理矢理体を沈めて静雄の顔を見ると、やはり照れているのか顔が赤いままだった。

「抱かれたいってのは男にとって最高の褒め言葉かもなあ、嬉しいからマジで抱いちゃろか静雄」
「えっあっあの、トムさん」

ウインクつきでからかうと、静雄は赤い顔をますます赤くして焦りはじめた。からかいがいのある反応が楽しくて、トムは調子にのって静雄の頭をそっと撫でてみる。すると静雄はビクッと体を震わせ、不安気な眼差しでトムを見つめた。その反応が面白くてもっとからかってみたいと思ったが、これ以上はかわいそうかと、トムは静雄の頭をわしゃわしゃと撫で回して笑う。

「はははっびっくりしたか?冗談だっ…」
「ふっふつっふつつかものですがよろしくお願いします…!」
「…ってええええええええええええ何だって静雄」

笑うはずだったのにうまくいかなかった。何だ、静雄ってこんな冗談言う奴だったか?まさか、静雄の顔がずっと赤かったのはこれを言うためだったとでもいうのだろうか。水面すれすれまでガバッと頭を下げた静雄にちょっと待てちょっと待て、とトムは頭を上げさせる。

「トムさん、俺、トムさんにならマジ抱かれてもいいっす」
「や、抱かれてもってお前…」
「抱かれてもいいですし、抱かせてもらってもいいっす」
「おーい何言ってんだお前」

聞き間違いではなかったらしい。静雄の目は真剣だった。心なしかキラキラとさえしていた。今度は自分がからかわれているのだろうかと、トムは顔が熱くなるのを感じながら静雄に言葉を返す。

「…お前それマジか」
「マジです」
「………マジでマジか」
「マジでマジです」
「……………マジか」
「マジです」

静雄は完全に本気のようだ。トムは何か言いたかったが、うまく言葉がでてこなかった。それは静雄も同じらしく、お互い顔も見ずに繰り返し同じ単語を呟くことしかできなかった。

「……………………静雄、あのよ…マジなのか」
「…マジですね」
「……………………………マジでか」
「………マジです」
「………………………………………マジ」
「……………マジです」
「………」
「………」
「…」
「…」




そんなやりとりを続けて風呂を出たのは2時間後。ふたりは見事にのぼせ、抱く抱かれるの話どころではなくなっていた。