二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

弟以上、恋人未満

INDEX|1ページ/1ページ|

 
私は何にこんなにイライラとしているのだろう?
雨宮ツバキはピンヒールのヒール部分を床に押し込むようにして歩く。もしくは、叩きつけると言った方が正しいのかもしれないし、他の人から見てもそう見えるであろう。
 原因はわかっている。自分がこんなにイライラしている理由くらい、自分のことなのだからわかっているつもりだ。だからこそ、腹立たしい。自分はもう少し良識のあるものだと、自分自身を評価していたのに。
 何故?今まで、人よりは少ないであろうが、それなりに恋愛経験はあるつもりだ。だから、いま抱いている気持ちが嫉妬という忌々しい、どす黒い、そんな醜い感情の賜物だということだって、わかってる。
 
 私は最低な人間なのではないか・・・?
いよいよツバキは自己嫌悪に陥り始める。プライドが高い方であろうとは、自分でも自覚してる。そんな自分が自己嫌悪になるなんて笑いものだ、と微かに口元を歪ませるのだが、これこそが自嘲という自己嫌悪の始まりとなっているわけである。
それに気づくとますます面白くなく、いつも以上に眉を顰めて見せるのだった・・・。
 多分。この一生叶わぬであろう片想いにすらもなれないこの感情は、ずっと昔からあったモノ。いま、初めて気付いた訳ではないのだ。
 
 雨宮 リンドウ。
 よくできた、3つ下の弟だ。そして、ゴッドイーターとして自分がまだ現役だった頃、共に戦った仲間でもある。
そして、初恋相手でもある。ずっと、ずっと、好きだった・・・。
そう、『だった』。いままでは・・・。
弟への親のような、母性本能のような、この気持ちを若いながらに誤解して『恋』だと、『愛』だと間違った形で理解して、想ってしまった。若気の至り。そう思ってた。
 それが見事に崩れたのは、今さっきの出来事。
リンドウに、新しく入った新型のロシアから来た少女のことについて、話そうと思って・・・彼の部屋に行こうとした。
途中にサクヤの部屋の前を通るわけだが、何故かドアが若干開いていた。よく見なければ分らない、それぐらいしか開いていなかったわけだが。例え少しでも、少々用心が足りないのではないだろうか?注意しようとおもって、彼女の部屋へ足を踏み入れたとき。
「あぁっ!リン・・・ドウぉ・・・」
まるで、絶頂を迎えたような、そんな声。いや、実際、声の主であるサクヤは迎えていた。『リンドウ』の手によって。
 知ってたはず。幼馴染みである、それくらいわかる。言ってたじゃないか。彼女は、笑顔で、自分に。 
『私たち付き合ってるんです、ツバキさん・・・』
 妬ましい。いろいろフラッシュバックして。静かに、気付かれないように部屋を抜け出して。
それと同時に、静かに自分の心の中は滾っていて。エレベーター前まで走って。
 永く思えた。エレベーターがたった一階、自分が居るこの階まで下に下がるだけなのに。こんなにもいっぱい考えてしまって。
近親相姦なんて笑えない。第一、もしここで自分がリンドウに想いを伝えたら?サクヤはどう思うだろう?
リンドウなんて、思い悩むだろう。二人共、優しいから。純粋で、昔と全く変わらないから。
 エレベーターのドアが開く。私は乗る。エレベーターの中にあった鏡に映った自分は、泣いていた。気付かなかった。
そして、同時に驚愕していた。何故なら、後ろからリンドウが走ってくるのが見えたから。
 
 私は急いで『閉』のボタンを何回も、何回も、押した。

 気付かないだろう?お前はいつも私を『姉』としか見てくれなかったから。
 私を『姉』という固定された位置に縛りつけて、縛り付けられれば縛り付けられるほど、私の中のお前への想いは加速する。

 エレベーターが目の前で閉まった気分はどうなのだろう?そして、エレベーターの扉が閉まる瞬間のお前の顔は、傑作以外の何者でもなかったぞ?そして、お前の瞳の中に映る私は、般若の如く顔で嗤ってた。

 止められるだろうか?今更、リンドウを諦められるだろうか?
というか、諦めなければサクヤを傷つけてしまうじゃないか・・・。
 あんな、醜い顔を弟の、彼の前で晒して。それでも尚、彼の前で『姉』で居られる自身なんてこれっぽっちもありはしない。どうしてくれよう?

 エレベーターの中、ツバキはたった一人。
彼女の中の世界は、リンドウへの『弟』というもの以上の愛情だけ。
作品名:弟以上、恋人未満 作家名:namo