うつくしいけもの
「お、猫」
ぴょっと道の反対側目掛けて一匹の猫が駆け抜けた
風のようにというか、獣独特の曲線を描いたラインがひどく美しい
そう言う美しい生き物を俺は知っている
長い手足をキレイに動かして、池袋を駆け抜ける
獲物の…まぁ蟲を捕まえてられた試しはないが
つーかあれはとっとと国家権力あたりに捕まらないかな…と、最近富みに思ってる
あれに意識を持ってかれている様を見るのは正直、楽しくないのだ
「しーずおー」
それでも、まぁ…
「トムさん、すんません…」
こうして戻ってくるからいいか…
うなだれて近くなった金髪を撫でてやる
脱色のし過ぎでキシキシするのは御愛嬌
今夜にでもちょっと良いトリートメントで労ってやろう
うつくしい獣を知ってる
長い手足で池袋を駆け抜けるうつくしい獣
獣は野良ではない
今日も俺の隣に戻ってくるのだ
作品名:うつくしいけもの 作家名:Shina(科水でした)