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地に堕ちた神2

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この森から見える空はなんと高く、青いのだろう。そしてどうしてとても懐かしいと感じるのだろう。
初めてこの森に雨が天より降り注いだとき、胸にあついものがこみ上げてきた。
訳がわからなのに涙がこぼれる。なにかとても大切で、大事なものがあの空にある気がして、僕は曇天の空へと手を伸ばしてみた。
その瞬間、後ろから伸ばされた腕に僕の腕は絡め取られてしまう。

「何をしているの?帝人くん」

「いざや様・・・」

僕の後ろにいたのは、口元に笑みをたたえているいざや様。雨に濡れてもなお、この人の美しさは損なわれない。
けれど僕は小首をかしげた。

(どうしてかな?いざや様が泣いているような気がする・・・)

雨のしずくのせいなのだろうか。いざや様が涙をこぼしているように僕には見えた。

「ほら、帝人くん。家へ帰ろう。風邪を引いてしまうよ」

「はい、いざや様」

僕はもう一度空を振り返りみる。やはりあそこには何か大切なものがあるような気がして。
でも、空を見上げながら歩くと時々躓きそうになるので、僕はすぐに空をみるのをあきらめる。
そして視界に映る僕の手を引くいざや様の背中はやっぱり悲しげに見えた。
家へと帰ってもなお、雨は止むことを知らずまるで己の存在を主張し続けているかのように降り続けている。

(まるで僕にここにいるよっていっているみたい・・・。でも、どうしてそう思うのかな?)

僕は飽きることなく、窓からのぞく雨を眺め続けた。だから、いざや様に呼ばれていたのに気がつくことができなかった。

「帝人くんは雨が好きなんだね・・・・」

「ぇ?」

自分が思ってもいないほど、とても近くでいざや様の声がしたと思った瞬間、僕の視界にはいざや様と、いつもは寝るとき以外に見ることのない天井が広がっていた。
いったい何が起こったのだろうと、驚きで何度も瞬きを繰り返す。

「ねぇ、どうして雨ばかりをみるの?」

「い、いざや様・・・?」

「いいから答えて」

僕は今まで聞いたことのない、いざや様の冷たい言葉に身をすくます。赤みがかった黒水晶が僕を映して、その視線で僕を貫く。
けれど、いざや様が話せと言っているのだから、答えなければいけない。僕は震える唇を叱咤して何とか言葉を紡ごうとした。

「なぜか・・・わからないので、すが・・・。どこかなつか・・しいかんじがっ」

いざや様が僕の首を絞めたため、最後まで言葉を紡げなかった。
訳もわからず僕は暴れる。苦しくて、辛くて、怖くて。足をばたつかせて、僕の首を絞めるいざや様の腕に爪を立てた。

(苦しいっ・・・!なんでっ!?いざやさまっ・・・・!)

「どうして君は・・・!どうして君は空を望むの!?」

僕は生理的に溢れてきた涙を止められないまま、いざや様を見上げる。いざや様は怒った顔をしていた。
その瞳からはありありと僕に対する怒りが見て取れる。そこで僕は理解した。

(あぁ・・・。僕がいけないことを言ったからいざや様が怒ったんだ・・・。だから僕はいざや様に怒られているんだ・・・)

解ると僕は一切の抵抗をやめた。ばたつかせていた足を止め、いざや様の腕にたてていた爪をひっこませた。
苦しさとつらさは変わらなかったが、怖さはなかった。だってこれはお仕置きだから。
怒らせた僕がいけないんだから。

(でもやっぱり苦しいっ・・・)

「ねぇ、帝人くん?君は俺だけをみてればいいんだよ。俺だけをその青い瞳に映していればいいんだ」

いざや様の言っている言葉をだんだん理解できなくなる。たぶん、頭に酸素が回らなくなったからだろう。
いざや様の首を絞める力は弱まらずに、ますます強く締め付けられる。ぎりぎりという音まで聞こえてきた。

「いざやさ、まっ・・・」

カチカチと視界が光り、耳鳴りが激しくなる。

「君は俺だけを見ていろ・・・・。いいね?帝人くん」

いざや様は今度はにっこりと笑うと、僕の乾いた唇にいざや様の唇が触れた。
それを合図に、いざや様の舌が僕の口腔へと進入し、奥で縮こまっていた僕の舌を引っ張り出す。
ぐちゃくちゃと変な水音が僕といざや様の口から漏れた。
僕は首を絞められていて苦しいのに、これ以上酸素を吸えない状態にしないでほしかった。
息がうまく吸えなくて段々と頭がぼやけてくる。いざや様の顔もどんどんぼやけてきた。

「渡さない・・・あんな奴らに絶対に渡すものかっ・・・」

時々いざや様が譫言のようにつぶやく言葉を、僕は理解できない。

(あんな奴らって誰ですか・・・?)

薄れいく意識の中で僕はずっと、僕の首を絞め口腔を蹂躙する人の姿を見つめ続けていた。

そして、いつか僕は思い出す。己が何者で、どこにいたのか。自分がどれほど周りに迷惑をかけていたのかを。
そう・・・、僕は竜の子。雨雲を支配し、空を従える竜の子。
作品名:地に堕ちた神2 作家名:霜月(しー)