二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

何の因果か運命か

INDEX|1ページ/1ページ|

 

何の因果かわからんが、私の部屋の玄関の前で血まみれの美形が倒れていて。いや、正確に記載しよう。髪も尻尾も耳すらも全て金色の、男の美人が血まみれになったまま眠っていた。
……とりあえず、どかさないことには部屋に入れないなと担ぎあげる。金色美人が寄り掛かっていた我が家の玄関扉にはべったりとした血の跡が付いていて。
出血多量で瀕死、なのかと思いきや、聞こえてくるのはくうくうという規則正しい寝息なのだ。まあ、掃除は後でもいいだろう。ついでに病院も警察も後でよい。そのまま肩に担ぎあげて、私は玄関の扉を開ける。玄関マットにぽたりぽたりと血が落ちた。
……なにはともあれこの血を何とかするのが先決か。

バスルームへと直行した。血だらけの服を脱がせてバスタブへとそっとおろしてやる。シャワーの温度を確かめて頭から順にかけてやる。湯をかけただけでは凝固した血がなかなか落ちはしないから、そっと掌で擦るように洗ってやった。すると、
「うわあああああああ誰だアンタ何しやがるっ!!」
大声と共に。
バキ、っと。
問答無用でパンチが飛んできた。
親切心で人助けなどするのは金輪際もうよそうと思った程度には後悔をした。
「君ねえ、血まみれの君を介抱してやろうというこの私にパンチでお返しするとはしつけがなっていないなあ……」
赤く腫れた頬を擦り、ふう、とため息をついた。美人は一瞬「へ?」と呆けたが「起きたらいきなり裸に剝かれてるっつー状況じゃ、当然まずは殴るだろうっ!」と主張して。そうか、まあそうだななどと私も納得したので笑って許すことにした。
私が他意も無く笑っていたら、美人も同じように笑ってきた。
「あー、すまねえな。ちっとばかしやばい筋のやつらに狩られそうになっちまってよ。オレ様てーそーの危機だったもんで、アイツらにつかまってヤられる最中かとも思ってさ。あー、そのすまねえな」
ヒトの種族には2種類ある。
私のようにヒト科ヒト族の人間と呼ばれるもの。そしてこの金髪美人のように、ヒト科ネコ族と呼ばれ、猫の耳としっぽが付いている人間だ。
ネコ族の人間は希少価値だ。特にこの美人のように髪も耳も尻尾も全て金色で構成されているのであれば高額商品として売買されるだろう。ならばこの血はその手のブローカーなどのヤクザ物の手から逃げてきた時にでも負ったものなのかもしれない。
「君、保護者もしくは飼い主はいないのかね?」
真っ当な保護者もしくは飼い主が付いていれば、やくざ者に狩られるような羽目に陥るわけはないのだが、念のためと思い私は確認を取る。
「親は死んだ。弟は行方不明。……だから、探したいんだ」
「君ね、それは危険だよ。君が弟君を探し出す前に、ブローカーどもに捕まって売られてしまうのがオチだと思うのだけれどもね……」
ネコ族の人間は数が少ない。大抵は愛玩動物として個人に所有されているかもしくは保護団体の監視下だ。東方にあるリゼンブールというネコ族の故郷はヒト族の立ち入りが制限されている保護区域で、100%とは言わないが安全に暮らしていられる可能性は高い。まれにそれ以外のネコ族もいるが、そんなものはレア・ケースだ。
「だけど……たった二人きりの兄弟なんだ。もし、万が一にでもアルが、弟が……、ひどい目にでもあってるならオレが、オレが助けないと……」
金髪美人の身体は傷らけだ。きっと過去に受けたであろう傷も随所に残されていた。
「わかった……協力を申し出よう…」
そう言ったのは身体中の傷に同情をしたのでは決してなかった。理由などこの時点では明確ではなかったのだが。彼自身に興味が湧いたからかもしれないし、単に運命なのかもしれなかった。
「私はロイという。現役軍人で階級は大佐。警察諜報部に勤める友人もいる。人探しをする上では役に立つと思う。だから、少なくともその傷が癒えるまではこの部屋から出ないで隠れていなさい。君を狩ろうとした者どもの摘発も可能だろうし、何よりも……、なんだ?」
驚いたように、金色の大きな瞳を見開いて、金色美人は私を見上げてきた。
「アンタ、イイヒト?」
「いいかどうかわからんが、これも一つの縁だろう。君はほかでもない我が家の前で倒れていたのだからねえ……。まあ、半分諦め、もう半分は君が美人だからかな?金髪の美人は私の好みなんだよ」
「美人、て。オレ、オスだけど、アンタそういう趣味の人?」
警戒を表すように、彼の金の耳がピンっと立った。
「いや?だが君は綺麗だし、それに面白そうだから。ああ、合意の上ならともかく無理強いはしないから安心したまえ。ベッドの相手に困ったことはないからな」
にやりと笑えば先の私の言葉は冗談だと思ったようで。「じゃ、ちっと頼むかな……」などと、警戒を解いたのだ。

これがエドワードと私の出会いだ。
以後彼は怪我が治るまでどころかそのままずっと私の家に居ついてしまった。

そして色々あって彼の弟を探し当て、リゼンブールへと送り返した後の現在も何故だが「ロイのベッドが気に入った。日向だしいい匂いがするしふかふかだー」とごろりと丸くなって寝続ける。弟とともに故郷に帰るかと思いきや、そんな気はさらさらなさそうであった。
「いつまでも居ついていると私に手ごめにされるぞエドワード。それが嫌なら故郷に帰りたまえ!」
と告げたらエドワードは「別にいいぜ」などとのんびり欠伸なんかをしているから。

まあそのなんだ。私も少々ぶち切れて。
まあそのなんだ。耳を齧って尻尾を掴んで足を開かせまあそのなんだ。撫でて擦って内壁を押して。突き上げて押し上げて揺さぶって。繋がった部分が蕩ける位に律動を繰り返して。本能に従って快楽の中へとダイブする。

そうやって実行実践したその後に「冗談でも何でもなくこういう意味で私は君が好きなんだからとっととさっさと故郷に逃げろ」と言ってはやったのだが……。した後で逃げろと言ってもそれはもう遅いというべきか。エドワードは腰に力が入らない身体を無理やりに起こしてきて、そうして。
バキ、っと。
問答無用のパンチを私へと繰り出した。
警告はしたのだがね。手ごめにするぞ、と。君にだって非はあるだろう。私の言葉を本気にとらず、欠伸交じりに「別にいいぜ」などと答えるのだから。
赤く腫れた頬を擦りながらエドワードを睨む。
「言うのとヤルのの順番が違うっ!スキくらい先に言え馬鹿っ!!」
「は?」
「馬鹿ロイ馬鹿馬鹿も一つ馬鹿っ!このトーヘンボク!!くそったれっ!」
馬鹿馬鹿と言うエドワードとこの私が実はとっくの昔に両想いで。単にエドワードが故郷に帰らなかったのは私のベッドが気に入っているのではなく、この私自身に惚れているからだとここでようやく理解して。

何の因果か運命か。玄関の前に落ちていた血まみれの猫は、私の運命の恋人で。身体の相性も非常に良いとまあそういう話であった。



‐ 終 ‐

作品名:何の因果か運命か 作家名:ノリヲ