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海に沈む夕陽と朱色に

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「友人」って言葉は二度も言われた。

一度目は一緒に旅行に行かないかと誘われた時。
「同じ風景が見える友人は君だけだよ」
二度目は的場さんの式に襲われかけた時。
「彼はこの名取の友人。これ以上、彼への無礼は許さない」
どっちの時もなんだかすごく微妙な感じがした。
いや、嬉しくないってわけじゃなかった。でも何かが心に触れた。大別すれば嬉しいっていう範疇にはいるのかもしれないんだけど、だけど、ちょっと何か別の感情がおれの心の中にあった。
なんだろう。なんだろうって考え続けてた。ホントに些細な引っかかり。だからこそ逆に気になり続けて。
考えて考えて、ようやくわかった。

「友人」て言葉に引っかかってたんだおれは。

本当なら嬉しいはずの言葉だったかもしれない。
トモダチなんて藤原家に引き取られるまでいなかった。
すれ違う人、迷惑そうにする人、嘘つきと罵る人。
おれの周りはそういう人だけしかいなかった。おれも、そういう人しかいないんだって周りを遮断していたところがあった。妖が見えるおれは他の人には理解されないんだって。しかたないからって。今思えばそういう態度がいけなかったんだってわかる。だから友達の一人もまともに作れなかったのはおれのせいってところもちょっとある。だけど、塔子さん達と一緒に暮らして、クラスメイトとも仲良くなれた。北本も西村も辻も、普通に、当たり前の友達みたいに話ができる。妖のことは言えないけど。それを言える友達もできた。田沼も多軌も、おれとは見え方は違うけど、だけど、妖が見えるおれをちゃんと理解してくれてる。
此処で、この場所で初めて。オレにはちゃんとした友達っていう存在ができたんだ。
妖だってそうだ。ここに来るまでは、迷惑な存在ってだけだった。見えるから、おれは誰にも理解されないんだってそんなふうに悪いこと全部押しつけて。
そうじゃない奴もいる。
妖でも人間でも。思いが伝わる相手もいる。
妖でも人間でも。上手く気持ちが伝えられない相手もいる。
そんなあたりまえのこと、おれは今まで知らなくて。ようやく少しずつ気持ちを言えるようになって。……まだまだ上手くはないけれど。

人とわかりあうことの難しさも、わかってきたのかもしれない。まだまだほんの一歩を踏み出したところだけれど。わかりたいと思うようになった。おれが出来ること、あるならしてみたいって。そんなふうに。まだうまくはできないけれど、おれは少しづつ変わってきてる。多分、良い方に。少しずつ、気持ちを話せるようになって。トモダチって存在が出来はじめて。
だから、きっぱりと宣言するみたいにおれのこと「友人」って言ってくれた名取さんに驚いたのかと最初は思った。
でも違う。
この気持ちは多分そうじゃない。
例えば北本とか田沼とかからおれのことトモダチだって言われたら、多分単純に嬉しかった。こんなに微妙な引っかかりなんて覚えなかった。
名取さんが、おれに言ったからこそ引っかかってる。
なんでだろう。年が違うからか?友達とか先輩後輩って近い年齢じゃない。おれは学生で、あの人は……ええと、芸能人とかもやってる妖祓い人……とかそういう人だからなのか?でもそれもなんか違うみたいで。おれはこのところずっと、考えてた。同じものが見えても妖に対する考え方が違うとか。……なんかこう、意見の差とかであまりうまく話が出来ないとか。友人帳のことを隠しているからとか。トモダチって範囲にあの人を位置づけるのはおかしいって思うのかなっていろいろいろいろ考えてみた。
でも、どの理由も、なんかどこか違う。微妙にしっくりこない。
じゃあ、何なんだろうって考えてた。

理由に思い至ったのは些細な出来事。
西村とか北本とかと話していた時のこと。どんなタイプの子が好みなのかとかまあそういう手の話。うっかりおれは名取さんの顔が思い浮かんでしまったんだ。
あれ?って思った。
多軌とか塔子さんとか、そういう身近な女の人とか思い浮かべるだろうって普通。なのに、なんで名取さんの鬱陶しい笑顔が浮かんでしまったんだろうって。あれ、おかしいなっておれは思ったけど。だって好みのタイプであの人浮かぶのってすごく変だ。でも、なんかこう、心のどっかでしっくりきてしまった。……不覚だと思った。オカシイはずだって。普通じゃないだろうって。ただでさえ妖なんて見えるおれは普通って範囲から外れてるんだから好きな人くらい普通なのがよかったなとかそんなことまで思ってしまった。
でもおれは。

でもおれは……の、その続き。考えてうんざりした。
正直なところ、頭を抱えた。
うわ……。気がつかなきゃよかったな。
それがおれの本音で。
きっとずっと「友人」なんかじゃ嫌だって思っていたんだ。心のどこかで。
もっと特別な、関係になれたらいいなって。
気がつきたくなかった……。微妙な引っかかりなんて気にしなきゃよかったな。
でも、気がついたらもう遅い。あー……。
友人じゃない。好みのタイプ。それが総称する特別さ。
おれが心の中で目を逸らしてた名取さんとの関係。
オレが望んでいるのはきっと多分、特別な、関係だ。

……そんな単語、口に出したらさすがの名取さんだって絶対に引く。というかおれ自身がすごく引いてる。何でこんなふうな気持ち覚えてしまったんだろうって、すごく嫌だ。うん、正直なところ、すごい困ってる。こんな気持ち、気がつかなければよかったってそんなんふうに。
なんかすごく疲れてる気分だ。あー、そうだそうだ。これは一時的な気の迷い。そういうことにしてしまおう。しばらくあの人に会わないでいたらきっと大丈夫。忘れる……のは無理でもせめて「友人」ってのがしっくりくるようになってるように、そういうふうに思いこもう。
少なくとも、名取さんにとってのおれは「友人」だ。二度も言われたし。うん、……しばらくあの人に会わないように避けておこう。まあ、もともとあの人に会うなんてめったにないことだ。本業でも副業でも忙しいことだろうし。
おれと名取さんは同じものが見える「友人同士」なんだ。それでいい。そういうふうに思いこもう。

そんなこと考えておれは自分を納得させようと、頑張っていこうと思ったのに。


なのに。


学校の校門の前で無駄な煌めきというか妖気を放っている人がいる。帽子を深めにかぶっているのに、なんか下校中の女子とかから「もしかしたらあの人って……」って感じの目線を方々から受けている。遠くからは「そうだよね、あの人絶対そうだよね」とか、なんとなくきゃあきゃあという感じ黄色い声に囲まれているその人が。……おれに向かってひらひらと手を振ってる。
そういうの、見てしまうと本当に鬱陶しい。会わないでいると気になるんだけど、会えば会ったで面倒くさい。名取さんはそういう人だ。
……なんでおれ、こんな人のこと好きになんかなったんだろう?おれは、おもいっきりあからさまにため息を吐いた。
だけど、名取さんは晴れやかな笑顔なんかを向けてくるのだ。
「やあ、夏目。一緒に海までいかないかい?」
避けようかなと思ったそのすぐ後にこの展開は何だろう。しかも海ですか、思いっきりベタ……なんだけど。
「…………名取、さん」
作品名:海に沈む夕陽と朱色に 作家名:ノリヲ