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パラレルスラローム (Re80) SAMPLE

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parallel slalom
パラレルスラローム
the sun

膝をついて、力一杯に振り下ろされる鉄球を真っ向から受ける。峰に添えた左手がビンッビンに痺れるほどの勢いと重量だ。足に腕に、体全体に負荷がかかるが、山本のバネで押し返せるほどだ。一度受けて鉄球を引くタイミングでついていくように地面を蹴り、空になった相手の胴を横一直線に払うと、目前のスーツに赤い線が走り、左右にずれた。頭上からせまる鈍器の気配に身を屈めるが間に合わないと最悪のことを考える。音にもならない音で背後で人が倒れる。重力のままに落ちてくるそれを横に転がることで避ける。それを追う銃弾が一発。避ける間に数発の銃音がして、数体の倒れる音が続いた。
時雨金時を煉瓦の隙間に刺し、体重をかけて立ち上がる。切られたスーツはもう役に立たない。しょうがないと溜め息をつくと同時に呼吸を整えると、自分に銃を向ける集団へと斬り込んだ。


「で、ボディガードがおまえか」
「そ、よろしくな、相棒」
リボーンの肩に手を置いて、にかっと笑う山本にリボーンは唇の端を上げる。
「ちゃんとついてこいよ」
「ヨロシクオネガイシマス」
「バカ、それは俺の台詞だ」
ボンゴレ10代目は、苦笑しながら革装丁のファイルを閉じて、紐をくるくるとかけて、リボーンへと手渡した。
「一応、リボーンの顔は知られていないんだけどね、もしかしたら山本の方が面が割れていたりして」
「でも、俺、なーんの問題も起こしてねーぜ。小僧ほど」
「ばーか、お前の無意識(ルビ:それ)が問題なんだ」
リボーンは深々と革の椅子に身を沈めて九代目へボルサリーノを片手で上げて深く頭を垂れ、綱吉へボルサリーノをくいっと動かして挨拶をした。山本はやっと板についてきた黒スーツに時雨金時を肩に担いで笑っている。リボーンは入口に向かいがてら山本の背中をはたいた。
「じゃ、ツナ行ってくるな」
「よろしくね」
綱吉は二人を戸口まで見送った。山本とリボーンは背格好は似ているが、リボーンの方がより細くて、隙が無い。二人が階下へ降りていくのを見送った綱吉はそのまま、廊下の端まで行って駐車場でチューンナップ済の車に乗り込む二人を見下ろした。どちらが上かわからないけれど、兄弟みたいに軽口をたたいている。ガラスに頬をつけてそっと無事の帰還を願った。

ボスの願いなんて知ったことではないと、二人を乗せたポルシェは制限速度+αでボンゴレ総本部のある丘の中腹から現れて一気に市街へと降りた。キュキュッと小気味いいブレーキ音で渋滞の街中を走る。薄いグレーのサングラスをかけた山本のハンドルさばきはリボーンの仕込みもあって、やや乱暴ながらもスムーズで急停止や加速のない心地いい運転だった。助手席のリボーンは、綱吉に託された書類に目を通した。分厚い書類は重要な契約書でリボーンと山本の役目はそれを同盟ファミリーへと運ぶことだった。常にドン・ボンゴレをガードしてきた最強のヒットマンと名高いリボーンが、ボンゴレリングの守護者である山本をガードするのではなく、山本が護衛するのは、今回リボーンがアルコバレーノだからだという理由がある。
アルコバレーノ。イタリアンマフィア界に伝わる最強の七人の赤ん坊。アルコバレーノ同士を除いて、少なくとも普通のマフィアはアルコバレーノを殺すようなことはしない。アルコバレーノはそれぞれ突出した能力を持っているが、不死に近い寿命と同等の記憶力を持つことから、陰ではレコーダーとも呼ばれている。アカシックレコードがこの世の、過去から未来への軌跡を描かれているものとしたら、それに近い存在。マフィアの起源から、ボンゴレファミリーの初代から、今現在のマフィアの動向全てを記憶する存在。人間にとって歴史というものはこの瞬間から過去になるもので、過去は証人がいない以上はある程度は自由がきく物だった。

(続)