hide and seek
見ていて、気づいたことがある。
天音カイトは、寝相が良い。というか、1度寝付いたら、基本的にピクリとも動かない。
ついでに、その格好も決まっていて、掛け蒲団の端を抱え込むように横を向いて丸まっているのがいつものスタイルだ。
だから、今現在、ライカから見えるのは、「く」というよりも「つ」の字型に盛り上がった掛け布団と、その端から覗く、散々に跳ねた赤毛だけ。
その蒲団を引き剥がせば、縮こまった丸い背中が見えるだろうが、そうはせず、ライカは黙ってゆるやかに上下する盛り上がりの横に腰を下ろした。
どこかで見たような、幼さの残る格好が、獣の仔のそれに似ていることに、ライカは最近気がついた。
独りで眠る夜、カイトは決まって、同じ姿勢になる。
柔らかく弱い部分を守るように。何かの目から隠れるように。
気づいてしまえば、たまらなくなった。そんな姿で眠らせたくないと思っ た。
もう、彼を傷つけるものなどないのだと。そう、はっきりと言ってやれない自分が、腹立たしくも、あった。
だから、ライカは。
「カイト」
静かに深い寝息を立てる身体を、背中から抱き締めた。
眠りの中だけでも、安らかであれば良い。そう願いながら。
カイトの、あたたかい匂いのする髪を撫で、彼からもらう温もりと、せめて同じだけを返せるならいいのに、と思いながら。
成長期の過ぎた男2人が転がるには狭いベッドでも、すき間もなくくっついていれば気にはならない。
窓から差し込む光がその眠りを妨げぬよう、カイトの目を手のひらで覆って、ライカも静かに目を閉じた。
作品名:hide and seek 作家名:物体もじ。