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物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
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かくれんぼ

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 実は、目を閉じるのは、好きじゃない。

 次に目を開けたときに、目の前のすべてが変わってしまうような気がして、有り体に言えば……怖い。


 現在の相棒である桐山ライカは、ときどき調べ物やらクライアントとの打ち合わせやらで、一人出かける。

 そんな日は、一人で食事をして、一人で眠りながら、ひどく落ち着かないのだ。


 隣に何の温もりもないということには、未だ、慣れない。

 慣れる日が来るなんて、思えない。



(ライカのせいだ)



 ずっと、傍にいたから。幼いころからの半身の代わりに、手を伸ばせば届くところに、いてくれたから。

 だから、この心は、いつまで経っても、弱いままだ。


 ぎゅっと蒲団を抱き込んで、丸くなる。温もりを吸った掛け蒲団は肌にやさしいけれど、自分の匂いしかしないことが、何故か、余所余所しく思われて仕方なかった。

 早く眠ってしまえばいいと、そうすればきっと、目を覚ますころにはライカが帰ってきているとわかっているのに。


 眠りたくない。

 けれど、何の音も、温もりもない部屋に一人でいるのは、それ以上に耐えられなくて。

 静かな夜は、独りで過ごすには、淋しすぎて。

 強く、強く目を閉じる。

 
 早く朝になればいい。そうすれば、きっとライカが帰ってきている。そして、こうやって夜更かししているぶん寝坊してしまう自分を、呆れた声で起こしてくれる。


 だから、だから、早く。


 冷える心を、早く見つけ出して、そうして、抱き締めて。




作品名:かくれんぼ 作家名:物体もじ。