かくれんぼ
実は、目を閉じるのは、好きじゃない。
次に目を開けたときに、目の前のすべてが変わってしまうような気がして、有り体に言えば……怖い。
現在の相棒である桐山ライカは、ときどき調べ物やらクライアントとの打ち合わせやらで、一人出かける。
そんな日は、一人で食事をして、一人で眠りながら、ひどく落ち着かないのだ。
隣に何の温もりもないということには、未だ、慣れない。
慣れる日が来るなんて、思えない。
(ライカのせいだ)
ずっと、傍にいたから。幼いころからの半身の代わりに、手を伸ばせば届くところに、いてくれたから。
だから、この心は、いつまで経っても、弱いままだ。
ぎゅっと蒲団を抱き込んで、丸くなる。温もりを吸った掛け蒲団は肌にやさしいけれど、自分の匂いしかしないことが、何故か、余所余所しく思われて仕方なかった。
早く眠ってしまえばいいと、そうすればきっと、目を覚ますころにはライカが帰ってきているとわかっているのに。
眠りたくない。
けれど、何の音も、温もりもない部屋に一人でいるのは、それ以上に耐えられなくて。
静かな夜は、独りで過ごすには、淋しすぎて。
強く、強く目を閉じる。
早く朝になればいい。そうすれば、きっとライカが帰ってきている。そして、こうやって夜更かししているぶん寝坊してしまう自分を、呆れた声で起こしてくれる。
だから、だから、早く。
冷える心を、早く見つけ出して、そうして、抱き締めて。