いつまでも、君が怖い理由
わんこと!
最近、一つ困った事がある。
あんまり皆が触れないから。
あんまり皆がいつも通りだから。
一日目は、知らないふりをした。
二日目は、なるべく見ないようにしたけど、やっぱり見てしまう。
ちらりと見つめれば、それだけで返ってくる満面の笑顔。
クラスの女子が見たら騒ぎ出しそうなその笑顔が眩しくて、俺は慌てて目を逸らす。
そして三日目。
俺は"ソレ"に触れてみたくて、仕方なくなっていた。
絶対触り心地がいいと思うんだ。
撫でると、気持ち良さそうに目を閉じたりするのかな…。
そわそわと身支度をしていると、リボーンに「気持ち悪いな」とか冷たく呟かれたけど仕方がない。
「だって、獄寺くんに耳と尻尾が付いてるんだよ?気になるじゃないか」
俺がそう言うと、リボーンはまたその話か、と言わんばかりに首を振る。
「何度言っても分かんねぇヤツだな。獄寺がそんなふざけた格好するわけないだろ。…お前の前じゃ、特に気合い入れてカッコ付けてんのに」
「ん?何か言った?」
ネクタイに苦戦していたので後半何を言ったか聞こえなかったが、もう目の前のリボーンはコーヒーをすすりながら遠い目で窓の外を見つめていた。…いつも思うけど、それ赤ん坊の仕草じゃないぞ。似合ってるのがまた恐ろしい。
「……別に、なんでもねーよ。それよりツナ、お前疲れてるんじゃないか?」
リボーンの視線の先には、玄関の前で待っている獄寺くん。
その頭には、朝の肌寒さに震える耳。ああ、早く行かないと…!
「ご飯はいいや、行ってくる!」
ドアを閉める音と重なって、リボーンの溜息が聞こえてくる。
「何度でも言うけどな。俺には、耳なんて見えねーぞ」
その声までは、俺には届かなかったのだけれど。
作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ