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【DRRR】完全犯罪不成立【静帝】

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》静帝

『完全犯罪 不成立』

静雄さんは、毎日トムさんと一緒にお仕事に出ている。
そのときカバンも何も持たないあの人は、財布と携帯だけをズボンのポケットに入れて行っているはずだ。
と、いうことは。
以前僕が絶対に捨ててくださいと言ったあの写真は、きっと自宅の部屋のどこかにあるはず。

と、いうワケで。
幽さんにお願いして静雄さんの部屋の鍵を借りてきてしまいました。

「自分でも不法侵入はさすがにマズイかと思うんだけどなー」

でも彼の弟には許可を貰っているので、不法侵入と言えないかもしれない。確かに家主である彼自身には何も断ってはいないけど。
周囲に誰もいないことを確認しながら鍵を鍵穴に通し、出来るだけ素早く、音がしなように鍵を開けた。誰もいないと思っていても、何だか気になって何度も後ろを振り返ってしまった。
そっと扉を開ければ、誰もいない静かな空間が広がっている。
数度お邪魔をしたことがあるけれど、あとでバレないようにしようと思うと、体中が緊張して、足を置く場所にも気を遣う。
靴を脱いで、部屋の電気を点けようとしてちょっと手を止めた。
いくら昼間で、カーテンが閉められているからと言って、電気を点けたら外から見えてしまうかも知れない。
もしたまたまこの近くを静雄さんが通ったときに、自分の部屋に明かりが点いているのが見えたら当然走ってきて犯人を潰そうとするだろう。

「いやいや。さすがに杞憂かなあ」

いくらなんでもそこまでの偶然はないと自分でも思う。でも1%でもリスクは侵したくない。
仕方なく携帯でスポットライトを起動すると、特に物があるわけでもない、片付いているようないないような部屋を捜索し始めた。
心当たりがあるとすれば、普段全く使用されていないクローゼット内の引き出しか、寝室の戸棚。
以前お邪魔したときにこっそりとタイミングを見図らいながらリビング内を確認したけれど、そのときはどこにも見つからなくて。
静雄さんに
「前のあの写真、ちゃんと捨ててくれましたか?」
と尋ねたら、
「…………おう……」
って。
あの間は絶対に嘘だ。どこかに隠し持っているに違いないと思う。

そうっと寝室に続く扉を開けてみる。隙間から、そこに誰もいないことを確認した。
ちゃんと朝、仕事に出て行く静雄さんは見たのだけれど、それでも胸の中で動悸がうるさいくらいに鳴り響いている。だってもしかして仕事がドタキャンになって寝てたりしたらどうするんだ。
そもそも、誰か、静雄さん以外の人がベッドで寝ていたら。

「誰もいない、よね…。当然、か」

つい口に出してしまうのは、本当に誰もいないか不安になってしまったから。
だって静雄さんはあれだけカッコイイし優しくて、その上男気溢れてて……。慌てて思考を止めた。だってここは、その人の寝室で、僕はそこに不法侵入しているのだ。状況的にそういった賛辞はマズイ気がする。

「静雄さんの香水の匂い……」

部屋の中に入れば、キツくない程度にふわりと、香水の匂いがした。
あの人が香水を着けているイメージはないんだけど、実際に販売されry……、着けているいるのだから不思議なものだ。
ふんわりと嗅ぎなれた匂いに包まれて、その匂いの中に誰の匂いも混じっていなくて、安心する。
何となく落ち着いてしまえるのだから、僕も随分、静雄さんに甘やかされているものだ。

「そんなことより、写真、写真……」

本当はこんな、他人の完全なプライベートな部分を粗捜しするような真似はしたくない。自分がこんなことされたら、怒るどころか完全に相手のことを嫌ってしまうと思う。
けれど、どうしてもあの写真だけは消滅させておかないと。
例え静雄さんに嫌われても。

嫌われても…。

「それはやだな…」

手始めにとクローゼットの扉に手をかけながら自分の言葉に傷ついた。
静雄さんなら、きっと自分が何をしても最終的には苦笑して頭を撫でながら許してくれる、という思いがどこかにあったのだ。それだけ僕は、あの人に甘えてるし、甘やかされていると自覚している。だけどそれが、どこまで許され、いつまで続くかなんて、保障はどこにもない。
怪盗をするような気持ちで、妙にテンションが上がっていたけれど、その気分は急激に落ち込んでいった。

 ―――ガタン

「…っ!?」

急に玄関の方で音がして飛び上がる。
慌てて開きかけていたクローゼットの中に飛び込んで、中からそれを閉めた。
帰ってくる筈がない、たぶんポストに何か投函された音だ。そう思っても手先が緊張で震えて、カタカタと揺れてしまう。続く音がないか耳を澄ませているうちに、肩で引っ掛けて、ハンガーにかかっていたはずのベストが落ちてきた。その衝撃に驚いてさらにビクっと全身を震わせた。
息を殺して、音を探って、何もなくて。
何分ぐらいそうしていたんだろうか。ほんの少しだったようにも思うし、10分ぐらい経ったようにも思う。
ようやくもう大丈夫な気がして肺に溜まっていた息を吐き出し、大きく吸い込んだ。
頭の上に落ちてきたベストをそのままにしていたから、吸い込んだ空気は猛烈に静雄さんの匂いをしていた。

「わぷっ」

香水だけの匂いではない、彼の匂い。
それが、さっきまでの激しい緊張感と対比した安堵とともに、強烈な安心感を与えてくれた。
早くここから出て写真を探さないと、と思うのに、ここで得られた幸福に少しの間でいいから浸りたくてしかたなかった。そういえばまだ足先が痺れたような感覚がして、上手く立てる自信がない。

「……あと、5分だけ」

確認した時計はまだ13時過ぎ。ちょっとだけ自分に言い訳して目を閉じる。
深く吸い込んだ空気は、独特の心地よさでもって、包んでくれた。


……帰宅した男が玄関先で靴を見つけるまであと5時間。
…クローゼットを開き、そこで眠る少年を見つけるまであと……。