嫌い嫌い嫌い好き!
俺にはこの世から消えてほしい人間がいる。
ソイツは何度脅しても懲りることなくこの池袋にわいて出やがる……
正直、ソイツに何をどれだけ投げ付けたかなんざおぼえちゃいねぇ。
あのノミ蟲野郎をどうすれば殺せるのか俺が教えてほしいもんだ。
…………臭う。
ああ、今日も懲りずに来やがった。
「いぃぃぃざやぁぁぁぁあ!!!」
「シーズちゃぁぁぁぁぁん!!会いたかったぁぁぁぁ!!」
ひしっ。
マンガみたいなそんな効果音だった。
殺意をこめて振り上げた標識(ちなみに今日は【止まれ】だった)を潜り抜けノミ蟲―――臨也は俺にしがみ付いてきやがった!
抱きつくなんて可愛げがあるもんじゃねえ。
折角弟から貰った服に皺が寄るじゃねぇかノミ蟲がぁぁぁああ!!
「……はぁはぁ…シズちゃん分充電~…」
「離れやがれ!!ノミ蟲!」
「ヒドイッ!折角わざわざ新宿からシズちゃんに会いに来たのに!」
「来なくていい、そのまま新宿で大人しくしてやがれ!」
「ガーン!俺傷ついた!傷ついたよシズちゃん!慰謝料を請求する!」
「そうかならそのまま死ねやぁあああ!!」
「だが断る」
「―――ぅ、らぁ!!」
シャツのことは一度無視して、へばりついていた臨也を放り投げ、今日二本目となる手近な標識を引き抜いて力任せに振り下ろす。
ところが、だ。
臨也はあろうことか俺が持っている標識のポールの上をかけてきた。
ちっこい臨也だからできる芸当なんだろう。
「手前ぇから殴られに来てくれるとは殊勝な心がけじゃねぇか!」
「残念ながら殴られる気は毛頭ないよ!て言うかシズちゃんそんな言葉知ってたんだね!」
「うぅるっせぇぇえ!!」
近付いてくる臨也のムカつく顔に拳を振り下ろす。
「振りが甘いよシズちゃん」
「!?」
するりと拳を掻い潜った臨也が近付いてくる。
ヤバイ、やられ……!?
ちゅっ、
「?!?!」
「んー……」
ちゅーーー、
なんだ、
何なんだこの状況。
「…なっ…ななななななな…」
からかってるんだ。
いつものように、この後ムカつく論理を喋り出すに決まってる。
「シズちゃん、だいすき」
「!?!?」
「いい加減気付いてよばーか」
嫌い嫌い嫌い好き!
(嫌よ嫌よも好きのうち!)
(早く気付いてよシズちゃん!)