Give me Candy!!
甘いものは正直あまり得意ではない。
それでも持ち歩く理由は…
「…ん」
佐藤が制服のポケットから取り出したのはイチゴミルク味の飴玉。
隣にいた相馬に顔を背けたまま差し出す。
「…ふぇ?」
一方差し出された相馬といえば、状況が飲み込めず、間抜けな声を漏らす。
「佐藤くん…甘いの苦手だよね?なんで…」
「こ…これはあれだ…お前とか種島とか伊波の餌付け用に…」
なぜか耳まで赤くして理由を述べる佐藤に、なんとなく腑に落ちないものの、じっと飴玉を見つめる。
「…食わないのか?」
「た、食べるっ」
仕舞おうとする手首を咄嗟に掴んで引き止める。
じーっと見つめ合うその様が、本人たちに見せる気はなくともさながら恋人同士のようで。
「…あの。仕事場でイチャつかないでください。目に毒です。主に先輩に」
小鳥遊の冷ややかな声が飛ぶ中、恥ずかしさからか飴玉を押し付けて背を向ける。
「か…帰る。俺上がりだから」
「…?あ、お疲れ様~」
振り返ることなく更衣室へと早足で歩き去る佐藤の背を見つつ、相馬は不思議そうに首を傾げた。
(…あとでメールでもしてみようかな)
シフト上がり。
のろのろと更衣室で着替えをしてると、ふと視界に入った佐藤のロッカー。
挟まるようにして見えた飴の袋に、思うところがあったのかすぐに着替えて更衣室を出た。
「ねぇ、種島さん。佐藤くんから飴とか甘いもの…貰ったことある?」
先に着替えて帰り支度をしていた種島に声をかけた。
「佐藤さんから?ないよ~。髪弄ってからかうくらいしかしてくれないもん」
ぷんぶん怒る様子に先程の佐藤の話との矛盾点を見つける。
それと同時に気付いた。
「…え?そっかぁ…ありがとう」
不思議そうな種島に挨拶をすると、店を後にする。
もし、佐藤くんが俺のためだけに甘いものを持ち歩いてるとしたら…。
自意識過剰かもしれないけど、嬉しくてにやけてしまう。
(…素直じゃないなぁ、佐藤くん)
小さく笑うと、佐藤のアパートへと足を向けるのだった。
(…はい、どちら様…)
(アメ頂戴?俺専用のっ)
作品名:Give me Candy!! 作家名:ちぇっく