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(間違ったのはきっとそこから、)

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もっときちんと君を愛せる方法を教えて

不安が付きまとうこの感情を、恋と言おう。臨也は帝人がかたかたと打っているキーボードの音越しに彼の感情を読み解こうとする。彼が好きなものはそれこそ腐るほど、うず高く積み上げられるほどあることを臨也が知っているとは言え、それをいちいち言い表して暴いていくことは無意味にほかならなかった。臨也は、だから携帯を開き、かちかちと音を鳴らして操作をしていく。
(君が俺だけを見ればいいなんて、思わないよ そんなこと)
臨也はかちかちと親指を動かし続けながら思考して、帝人を見つめる。帝人の視線はパソコンに向けられており、無言だけが占拠する空間で限りなく機械の音だけが広がっていった。
「すみません」
帝人は謝り、臨也へ視線を向けることなくかたかたとキーボードをいじる。主語のない謝罪に、臨也は答えることなく携帯を閉じた。
「何が?」
臨也の問いかけに、帝人は何も続けることなくかたかたと指を動かし続けている。臨也は帝人の細い肩を見つめた。帝人が何かを話す気配は無く、再び空間は無音に包まれる。
「君は何に対して怯えているの?」
臨也の言葉を遮るかのようにキーボートを打つ音が止む。それは実際には臨也の言葉をしっかりと聞くために帝人が作業を止めたということであったのかもしれないが、臨也はそこで言葉を止めてしまった。帝人はゆるゆると息をつき、パソコンの画面に視線を向けたまま、そろそろとした動きで臨也へ手を伸ばしてきた。目でもって確認されていないまま畳を移ろう帝人の手に、臨也は視線を落とす。帝人は何も呟くことなく、後ろに伸ばした手の先をそっと動かした。
(君が俺だけを見ればいいなんて、そんなことは思わない)
臨也は帝人の指の先に触れ、ぴりぴりとした電撃に似た刺激が指間を通る感覚を知った。熱を知覚しているはずであるのに、熱いとは思わない。臨也の戸惑いに、帝人は気付いていない様子で すみません と弱弱しく呟いた。
「こわい」
パソコンに向けられた視線は、目の奥に潜む感情を気取られたくないというその考えの表れなのかもしれない、と臨也は思う。思ったところで帝人が臨也を見つめ返すことは無く、指先でしか行われていないその触れ合いがより深くなることは無いのである。
「こわい」
帝人はもう一度呟き、顔を伏せる。デスクトップに映る光は彼の表情までを読みとって解析してくれることも無く、じい、と何かが焼け焦げるような音だけが響いている。
「なにも見なかったらいいのに」
臨也は呟き、その言葉がどれほど空虚で、どれほど悲惨なものかを知り目をきつくつぶった。

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(あいしてるのはほんとうなのに)