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戸惑いながら恋になろう

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手を握っていたその体温で安心できた、だからきっとこれは恋だ。

だからきっとこれは、こいだ。

「あの、静雄さん  …あのう…」
その柔らかな声を聞いた瞬間、平和島静雄は夢ではないかとおぼろげな頭で考えた。濃紺のシーツと煙草の染みついた匂い、感覚は全て自分の部屋の寝室で寝ていると伝えており、そこにいるはずのない声が響くはずは無いのである。
(…昨日、確か仕事上がって…トムさんと呑んで、…)
ベッドに入った記憶もないが、自分の部屋にいる以上帰ってはきたのだろう。寝がえりをうち、ふと声が聞こえた方角から少しだけ戸惑った様子が伝わってきて静雄は苦笑した。
「…あともうちょっとだけな 」
夢だと割り切っている静雄は低く声を発し、すぐにうとうととまどろみ始める。声は戸惑いを増した様子で、静雄さん、ともう一度言葉を発した。心地よく響く自分の声に安心している事実に気付きながらも、静雄は夢にしては随分とはっきり声が聞こえるものだと思案を巡らせた。
(…そういや呑んで、それから帰る途中に…何かあったような気が …)
静雄はぱちりと目を覚まし、ベッドから跳ね起きて声のする方角を見つめた。自分の格好が仕事着にしているバーテン服のままであるということに気付いた静雄は、しかし夢ならばあとかたもなく消えるはずである声の主が吃驚した様子で自分を見つめている現実に固まる。
「あ、お おはようございます、 静雄さん…」
竜ヶ峰帝人が戸惑いながらも浮かべた笑みに、静雄は昨晩のこと全てを思いだして いかりたっていた肩をすとんと落とした。

呑んで帰っているその道中で、静雄は帝人に出会ったのである。呑んだ帰りとは言っても時刻は八時を回ったところで、ぎりぎり高校生が出歩く時間ではあるが、真面目な性格だと一見して分かる大人しめの帝人に夜の池袋は不釣り合いに見えた静雄が聞くと、帝人は友達と寄り道していたと述べた。そこに少しだけ痛みを覚えた静雄は、帝人の手を掴み そのまま自宅まで連れてきてしまったのである。

(…拉致監禁なんだろうな、こりゃぁよ…?)
静雄が昨晩を思いだし、ぼんやりと自分の罪状を考えている間、帝人はおろおろと視線を彷徨わせて、ありがとうございます、と声を上げた。怪訝そうな視線をみせる静雄へ、帝人は静雄にとって見覚えのある服のすそを摘まみあげる。静雄と比べればどうしても細身で華奢に見える帝人が着ているそれに視線を送り続けた。
「あの、これ。服が無いって言ったら貸していただいたものなんですけど…覚えてますか?」
あとシャワーや食事も、好きに使えって。帝人のぎこちない言葉に、静雄はそういえばそんなことも言った気がすると思いだして頷いた。帝人はほっとした様子で、静雄へ笑顔を送った。
「良かった…。静雄さんが僕のこと見て不思議そうな顔をしたから、忘れられてたらどうしようって思ってました」
「や、つーかよ。俺こそお前を勝手に…、拉致監禁になるよな、悪い…」
警察、と静雄が慌ててはなった言葉に、帝人はきょとんと目を丸めて首を傾げた。帝人の態度に目を細めた静雄へ、男子高校生はくすくすと笑う。
「そんな。僕もシャワー使わせてもらったり、勝手だとは思ったんですけど冷蔵庫の中のもの食べさせてもらったりしたんですから」
「そりゃあ俺がいいって言ったからだろうが…」
僕の家シャワーないですし。帝人が恥ずかしげに呟いた言葉を聞きながら、静雄はもう一度 悪い と呟いた。帝人はくすくすと笑いながら首を横に振る。
「静雄さん、覚えてないんですね」
帝人の言葉に、静雄はきょとんとした表情をみせる。帝人は何も言わず、にこにこと笑ったまま ですね ともう一度首をかしげてみせた。
「思いだしたら教えてください」
帝人は笑いながら呟き、静雄の戸惑いを更に深める。

「静雄さん、ど、どうしたんですか…!」
話していたと思ったら手を握られ、ずんずんと歩いていく静雄へ帝人は慌てて声を上げた。もしかしたら自分は何かおかしなことをいってしまったのではないか、帝人の戸惑いに気付いた様子も無く、静雄は進みながらふと帝人を呼んだ。
「俺は お前のことが好きだ」
帝人が追及の言葉を止めてしまうほどにはっきりとした告白へ、帝人は目を丸めた後、頬を真赤に染め上げる。静雄はそれから言葉を放つことなく帝人を連れて池袋を進んでいったが、帝人はその間じゅうずっと、繋がれた手から伝わる体温に安堵していたのである。

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だからこれはね、こいなんです  なんて