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君のまわりは愛に溢れている

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岸谷帝人、15才。闇医者な兄と都市伝説な妖精さんと三人暮らしをしている。諸々な事情があって、小中共に学校に通っていなかった帝人だが、高校に進学することに決めた。進学先は兄の母校である元・来神高校、現・来良高校だ。




ぴんぽーんと音が鳴り、帝人は手が離せない兄に代わって玄関に行く。どうやら宅配便らしく、笑顔が眩しいお兄さんがサイン下さいと受け取り書とボールペンを差し出しされた。『岸谷』とサインをし荷物を受け取る。「ありがとうございましたー」と去っていくお兄さんの背中に御苦労さまですと投げかけて、ドアを閉める。腕の中の重みになんだろうと宛名を見ると、届け先は『岸谷帝人』そして送り先が『森厳』となっていた。
「あ、」
帝人は僅かに目を輝かせて、駆け足で自分の部屋へと戻る。ベットの上に乗り、割れ物注意の赤いシールが貼られていた包み紙を景気良く破れば、白い箱が出てきた。少しだけ逸る心を制しながら、ゆっくりと箱を開けてみた。
「わあっ」
そこにあったのは綺麗に折り畳まれた来良高校の制服だった。そっとジャケットを取り出し広げてみる。真新しい布の感触と色が眩しく感じた。箱の中にはズボンとネクタイ、下に着るカッターシャツ。そして、
「靴下とベルトまである。・・・・父さんってば一式揃えちゃって」
呆れ気味に呟けど、面映ゆそうに帝人は微笑んだ。ガスマスクを常時被ったまさに奇抜な父だが、間違い無く帝人を愛してくれている。高校が決まった時、真っ先に「入学祝いに私から制服を贈ろう!」と言ってくれた。まあ、そのせいで来良は私服可の学校だと言いだせなくなったのは余談だ。毎日、服選びに悩むよりはいいかと帝人は父の厚意に甘えることにした。
「高校生、かぁ」
帝人は小学校と中学校と学校には通わなかった。所詮、不登校児にはなるが、けして苛められていたわけではない。学校とか先生とかが合わないというような、そんな明確な理由があったわけではない。ただ帝人は学校に通うという意味を理解できなかったのだ。帝人の世界は愛する家族と、大好きな妖精デュラハンさえいれば事足りた。それだけで確立していたのだ。そんな帝人が中学を卒業する年になった頃、「高校に行きたい」と言った時は周りを大層驚かせた。もちろん初めは色々と心配されたけれども(セルティさんは【宇宙人に誘拐されたらどうするんだ!?】って慌てるし、兄さんは兄さんで「宇宙人より臨也のほうが厄介だよ!」って言うし。というか兄さんにここまで言わせる臨也さんってほんとどんな人なんだろう)、結局いつも大人しい帝人の数少ない主張に折れてくれた。心配をかけてるのは自覚している。それこそ物心ついてから社会の箱庭とも呼べる学校など足を踏み入れたことが無いのだから。それでも帝人は高校というものに行きたかったのだ。そんな帝人の変化を、周りは少しだけ寂しそうにけれど微笑ましく見守ることにした。
鏡の前に立ち、ジャケットを身体に当ててみる。
「うーん、・・・・ちょっと大きい、かな。何か、変な感じ」
そう言いながらも、帝人の口元は緩みっぱなしだ。着てみようかなと思った時、部屋のドアをノックする音が響く。
「帝人?何か届いたのかい?」
「あ、兄さん」
すぐにドアを開け、贈られたものを見せる。ああ、と合点のいった顔をした兄、――新羅は頬を僅かに紅潮させている弟の頭を優しく撫ぜた。
「これで準備万端だね」
「必要なものは全部兄さん達が揃えてくれたから」
鞄や靴に文房具一式、そして携帯まで高校進学が決まったその日のうちに贈られたのだ。それにはさすがの帝人も困った顔をしながらも、可愛らしい笑みを浮かべて受け取っていた。
「着てみたかい?」
「ううん。まだ」
「なら一回着てみるといいよ。あ、でもセルティが来てからがいいかもね。二度手間になっちゃうし、セルティもきっと見たいと思ってるだろうから!」
よし今のうちにカメラとビデオを用意しておこう!と兄はいそいそと部屋を出ていった。帝人はぽかんとそれを見送る。やがてぽつりと「高校入学すれば、毎日見るのに」とどこか照れ臭そうに呟いた。





セルティが帰ってくると、早速帝人の制服姿をお披露目することになった。ぎこちなく制服に身を包んだ帝人の前には【かわいい!いやかっこいい!ああでもやっぱりかわいいぞ帝人!!】とPDAで興奮を伝えつつ、もう片方の手では携帯のカメラで連写するセルティ。そして「いいねいいね帝人くん!今度はくるりと一回転してみようか!あ、後で3人で写真も撮ろう!」とビデオカメラを回している兄がいた。若干二人の勢いに引きながらも、喜んでくれるのは帝人としても嬉しいことなので、白い頬をはんなりと紅に染めて、帝人は笑った。




優しい優しい檻の中で生きていた帝人は、これから知らない世界に足を踏み出す。哀しいこともあるかもしれない。傷付けられることも、痛いことも、恐いこともあるかもしれない。でも、優しい妖精や、甘やかしてくれる兄が居る限り、帝人は大丈夫だ。



「兄さん、セルティさん」
「うん?」
【何だ?帝人】
「だいすきだよ」
ぱちりと瞬きをする新羅と、がちりとかたまったセルティに、帝人は照れ臭そうに笑う。
「えへへ、ちょっと伝えたくなっちゃったから」
可愛らしく頬を掻いた少年に、大の大人ふたりが飛び付くまであと――、








《ああもうかわいいかわいいかわいいかわいいかわいry》
(私の弟は世界一だね!セルティと帝人ラブ!愛してるよ!!)
(に、にいさん、セルティ、さん、く、くるしい、)